同性パートナーも事実婚パートナーに該当し得る。
最高裁は26日、犯罪被害者給付金を巡る訴訟で初判断を示し、異性カップルと同等の権利を求めてきたLGBTQ(性的少数者)の支援者らから喜びの声が上がった。犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)と同様の文言で事実婚パートナーを対象にする法令は多い。今後、同性パートナーも対象に含む解釈の見直しにつながるかが注目される。(太田理英子、加藤益丈)
最愛の同性パートナーが突然殺害された事件から9年余り。「ホッとしました。同性パートナーも異性パートナーも同じと認めてくれた」。原告の内山靖英さん(49)は体調不良で声が出づらく、判決後の記者会見では、内山さんが心境をつづったメモを弁護士が代読した。弁護団は「同性カップルの法的保護を正面から認めた初めての判決だ」と声を弾ませた。
犯給法と同様に事実婚パートナーを「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」と定める法令は約230あり、自治体条例も複数ある。原告側の堀江哲史弁護士は「同様の結論が導けるわけではないが、各法律の趣旨・目的に立ち返り、同性カップルも保護対象と解釈する余地を開いた」と評価する。
◆「パートナーシップ制度」ではカバーされない
LGBTQの当事者団体の全国組織「LGBT法連合会」の調査では、法令で異性の事実婚パートナーには認められる労災の遺族補償や介護休業が認められなかったケースが複数報告されている。2018年には、元北海道職員の同性パートナーが事実婚パートナーと認められず、扶養手当が不支給になった。元職員は道に支給などを求める訴えを起こしたが、札幌地裁判決は「対象に同性の関係は含まれない」として訴えを棄却した。
同性カップルを公的に承認する「パートナーシップ制度」は全国で400近い自治体に広がるが、法的効力はない。同連合会の神谷悠一事務局長は「異性事実婚カップルには社会保障が広くカバーされているが、同性の場合はほぼ認められず、不平等な状態。生活への影響は甚大だ」と強調する。
この日の最高裁判決は、「遺族らの精神的、経済的打撃の早期軽減」という犯給法の目的、趣旨を強調して同性パートナーも対象に含むという結論を導いた。その傍ら、林道晴裁判長は補足意見で「あくまで犯罪で不慮の死を遂げた者の遺族らへの支援という特有の目的で支給される給付金の解釈を示した」と、他の法令でもただちに同性パートナーが対象になるわけでないとくぎを刺した。
◆「ドミノ倒しのような見直し」期待できるか
だが、京都産業大の渡辺泰彦教授(家族法)は「そもそも同性であるために婚姻外の関係を法的に不利に扱うことは平等権に反する」と指摘。「他の法令を巡り、今後、国や公的機関は、異性と同性を区別する合理的な説明や制度設計の再考を求められる。ドミノ倒しのように、解釈が見直されていく可能性は十分にある」とみる。
神谷事務局長は、自治体の対応も注視する。全国でLGBTQへの差別禁止条例を掲げる自治体は増えているが、職員への手当で同性カップルの権利が保障されないケースもあり、理念が制度に反映されていないことは珍しくない。「今回の判決が、各自治体で当事者の権利保障に関わる制度や施策を精査する契機になってほしい」と求めた。
【関連記事】「事実婚に同性カップル含まれる」VS「現行法が想定していない」 同性パートナー給付金訴訟で最高裁弁論
【関連記事】同性婚認めない規定は「違憲状態」 東京地裁判決、今の制度は「同性カップルから人格的利益を剝奪する」
【関連記事】同性婚認めない規定は「違憲状態」 東京地裁判決、今の制度は「同性カップルから人格的利益を剝奪する」