岸田首相の支持率が“史上最低”を更新も、低すぎて「鈍感慣れ」大増税して退陣へ(2024年2月23日)

下がり続ける支持率が生む政権の「空気」

支持率で変わる“政治的エネルギー”とは

 この投稿で指摘されたことは、誠に不思議な現象である。「内閣支持率が低過ぎて、逆に世論調査には鈍感になり慣れてしまいました」なのだという。通常、支持率が高ければ、政治的にリスクが高く、世論受けの悪い法案(たとえば、安倍政権における安保法案や消費税増税)を通す政治的なエネルギーがあるとされる。

 逆に、支持率が低いとポピュリズムと呼ばれるようなバラマキをしたり、とにかく世論受けを狙ったりするものだ。

 しかし、支持率が低すぎると、また違った雰囲気になるようだ。何をやったところで、世論調査はどうせ低いに決まってるのだから、世論受けなど狙わずに、嫌われてもいいからやりたいことをやろうというわけだ。

 これは、先に触れた菅直人政権で起きたことだが、支持率が低く、退陣を表明した後「消費税の増税方針」を決定した。

 退陣会見でも「社会保障と財政の持続可能性を確保することはいかなる政権でも避けて通ることができない課題であり、最小不幸社会を実現する基盤でもあります。諸外国の例を見てもこの問題をこれ以上先送りにすることはできません。難しい課題ですが、国民の皆さまにご理解をいただき、与野党で協力して実現してほしい。切に願っております」などと念を押している。

 ここで、政策というものを、ザクっと考えてみたい。

「やりたい放題化」の岸田政権が突き進む先

 まず、国民にとって税金を上げるか、下げるかというと、税金を上げるほうが当然不人気で、税金を下げることは、人気取りと言われることが多い。

 また、政府の支出を増やすか、減らすかというカテゴリーでは、支出を増やすことは政府のサービスを増やすことになり、政府の支出を減らすことは国民へのサービスを減らすことになり、こちらも不人気政策である。

 政治家が世論を気にしなくていいという立場に置かれたときに、実行できる政策は、増税と政府支出の削減の2つがあるはずである。どちらも政府の債務を減らす政策であるが、増税は経済成長を止めてしまうことがわかっている。

 国民負担率(国民の所得に占める税金や社会保険料の負担の割合)が1%増えると、潜在成長率がマイナス0.11%となり、さらには家庭の可処分所得も大幅に下がることがエコノミストの調査(T.Nagahama,2023)によって明らかになっており、またほかの先進国と比較して日本の負担率は突出して上昇率が高い。

 同じような調査が2000年に日銀が実施しているが、ほぼ同じ結果であった。簡単に言えば、国民負担が高くなれば、経済成長はできなくなり、国民負担が減れば経済成長ができる。それだけのことである。

 しかし、日本では、なぜか特にやりたいことがそもそもないような不人気宰相は「増税」に走ってしまうのだから困ったものだ。岸田首相も「税金」「税」という名称がつくものについては、税率を引き上げていないが、今般「子育て支援金」なる税金を新設することを閣議決定した。

 子育て支援金が税金ではないと強弁する人もいるようが、たとえば、日本銀行(情報サービス局)のWebサイト「知るぽると」によれば、「税金(tax)とは国や地方公共団体が、その必要な経費をまかなうため国民から強制的に徴収する金銭。租税ともいう」と書いてある。やはり税金と断じるほかない。

 どうせ不人気政策を実施するなら、日本中にばら撒かれるムダな補助金をバッサリとなくしてほしいものだが、岸田首相は増税路線を突き進んでいっている。増税をすることが世の中のためになると信じて疑わないのだろう。ファクトはその逆であるのに。

 支持率が極端に低くなれば、河村氏の推測どおりに、さらにその傾向に拍車がかかることになる。9月の自民党総裁選で引きずり下ろされるのは確実視されているが、それまでの半年を、支持率が低すぎてやりたい放題化した岸田首相が何をしでかすのか、恐怖ですらある。

日本ために国民が“やめるべきこと”

 バラマキをやめさせる、という問題。これは、裏金の汚職問題と同じ病根だと感じていることを最後に指摘させてもらいたい。この問題については、ケンブリッジ大学の研究『政治腐敗の罠』(Political Corruption Traps、2016年)を紹介したほうが早いだろう。

 この研究では、「政治の腐敗は、まったく公共の利益になっていない。そして、公共の利益になっていないとみんなが認識しているのに、それぞれの立場が、自分の影響力を高めようとすることで、腐敗が増えていくこと」が明らかになっている。

 筆者の知人にも立派な政治家はたくさんいるし、報道で面白いことを言っているなあと感心する政治家もたくさんいる。しかし、どんな政治家も腐敗していくのは、現在の国会だけではなく、日本の有史以来、そして世界中でも同じことだ。

 政治家というのは汚れた職業なのである。政治家は、特に優秀な人間であればあるほど、高いポジションを求めて、または選挙区での優位を築くために、政治活動を続けている。永田町で子分を集め、選挙民の歓心を買い続けるのに、清廉潔白でいられるほうが難しいだろう。

 政治家が汚れていくのは仕方がないとしても、その原資となるバラマキや補助金を減らしていくことが、悪事を根絶やしにするために必要なことだ。

 まとめると、倫理的にも、日本の経済成長のためにも、一般国民がバラマキ政策を続ける政党や政権を支持するのはやめたほうが良いということだ。

 

執筆:ITOMOS研究所所長 小倉健一