成年後見制度/欠点改善し利便性高めたい(2024年2月22日『福島民友新聞』-「社説」)

 支援や保護を必要としている高齢者らが、使いやすい制度に改めていく必要がある。

 認知症や知的障害などで判断能力が弱っている人の権利擁護のための成年後見制度の利用促進に向け、小泉龍司法相が法制審議会に制度見直しを諮問した。

 2000年に導入された成年後見制度では、家庭裁判所に選任された後見人が本人に代わり、預貯金や不動産の管理、介護サービスの手続きなどを担う。後見人は親族のほか、弁護士や司法書士などの専門職などから選ばれる。

 法務省などによると、22年10月時点で65歳以上は約3600万人で、このうち認知症の人だけでも600万人に上るとみられる。しかし制度の利用者数は伸び悩んでおり、全国で約25万人、県内でも約2500人にとどまっている。

 認知症などの症状がなくとも、将来の生活や財産の管理に不安を感じている高齢者などは多い。後見人制度はそうした人の権利を守り、安心して生活できるようにするのが目的だ。利用者が少なく、その役割を果たせていないのならば抜本的な見直しが急務だ。

 いったん制度の利用を始めると原則としてやめることができず、本人の意思にそぐわない形で物事が進められても後見人を交代できないなど、使い勝手が悪いと指摘されている。後見人の権限が強く、本人が望まないのに施設に入所させられた、親族に資産を使い込まれた―などの事例もある。

 法制審では、必要な時にだけ利用を可能にすることや、後見人が全てを決定するのではなく、利用者の判断能力に応じ、権限を制限するかなども議論の対象となる見通しだ。後見人が本人の意思や希望を尊重し、適切に支える環境を整えることが重要だ。

 実際に後見人を担うのは弁護士などの専門職が大半だが、経済状況に応じ月数万円の報酬を支払い続ける必要があり、利用者の負担が大きいことも懸念されている。

 専門職に比べ、普段から身近に接している親族や施設関係者の方が、利用者の事情や希望を把握している場合がある。過疎地など専門職が少ない地域も多い。遺産分割や施設への入所など一定の手続きが済んだ段階で、専門職から親族や福祉関係者への交代を可能にするなど、柔軟に対応できるような仕組みを検討してほしい。

 高齢者を狙った特殊詐欺事件などが増えている。1人暮らしなどで身寄りのない人も多く、制度の必要性は高まっている。利便性や負担の問題を解消し、制度自体の信頼性を高めることが大切だ。