心に通ずる道(2024年2月22日『福島民報』-「あぶくま抄」)

世界が注目! 和食は理想の栄養バランス?!|おいしい和食の ...

世界が注目! 和食は理想の栄養バランス?!|おいしい和食の ...

 邪馬台国[やまたいこく]の女王卑弥呼は80歳ぐらいまで生きたとの説がある。楢葉町出身の食文化史研究家の永山久夫さんは、日頃口にしていたスープ「菜茹[さいじょ]」を長寿の理由に挙げる。免疫を強める効果があったという

▼どう作ったか。野菜をいくつか煮込み、大豆を発酵させた調味料で味付けした。永山さんは「みそ汁のルーツ」と指摘する。以来、形を変えながら飲み継がれてきた。健康の知恵が詰まった和食は、総じて体に優しい。長寿大国を支える源となっている

▼和食がユネスコ無形文化遺産となって丸10年。登録が契機となり、海外で提供する店が急増している。郡山市の調理専門学校は外国からコックの卵を招き、「ワショク」を教える取り組みを始めた。昨年はフランスから12人が参加した。県産食材を使いながら、すしや天ぷらの調理を学んだ。原発事故の被災地や農家を訪れた。今後も各国から受け入れる予定という

▼政府は登録により、災厄で揺らいだ国の食の信頼回復を目指した。県内で学んだ料理人が世界で腕を振るう日が来る。「心に通ずる道は胃を通る」。美食家で知られる作家開高健の名言だ。卑弥呼の遺産は1800年の時を超え、世界をうならせる。