献血意識の普及 若者の発想力が光明だ(2024年2月22日『山形新聞』-「社説」)

 降雪期になると毎年聞かれるのが、献血の不足だ。県赤十字血液センターによると、献血者の中心は会社員で、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始は長期休暇のために企業などの集団献血による協力が得られにくい。これらの時期は個別献血が中心となるが、人数は天候に左右され、特に雪の日は人が集まらない。安定した量の確保には献血意識の普及が重要で、将来の継続性という観点では、特に若い世代への浸透が求められる。

 献血ができるのは原則として16~64歳だが、60代になってからも献血経験がある人は69歳まで可能となる。同センターによると、県内の10~30代の献血者数は2012年度が2万4296人だったのに対し、22年度は1万4745人と約40%減少した。献血者の全体数は12年度の4万6136人に対し、22年度は4万2072人と約9%減にとどまっており、若者の減少が際立っている。少子高齢化、人口減少という中にあって若者の献血をいかに増やすかが課題と言える。

 その一つとして、若者自身に啓発活動の中心を担ってもらうことが効果的ではないだろうか。山形市で先月、寒河江高2年生有志による献血のワークショップが開かれた。生徒の一人が病気で輸血を経験したことが活動のきっかけとなった。同世代からは献血に対して「痛そう」「時間がかかる」といった声が聞かれるが、巡り巡って自分自身を救うことにもなることを知ってほしい。その思いから、オリジナルのボードゲームを通して献血への理解を深めてもらう「いのちのバトンプロジェクト」を企画、小学生―大学生を主な対象に参加を募った。

 ゲームは献血する側、輸血を受ける側それぞれの人生をたどる2種類から成り、ルーレットで出た数だけマスを進み、途中で立場が入れ替わる場合もある。マスには「16歳の誕生日を迎えた!初めての200ミリリットル献血をする」「抗がん剤治療がスタート。薬の副作用で赤血球や血小板が減少」などと記され、ゴールを目指しながら、献血できる年齢や、抗がん剤の副作用による血液成分の減少が輸血で補われることなどを学ぶ内容。当日は約40人が参加し、「献血の大切さがよく分かった」との声が聞かれ、おおむね好評だった。若者の発想力は光明であり、深まった共通理解が献血行動につながることを期待したい。

 若い世代の献血を増やすため、県や同センターの担当職員による献血セミナーが各地で開かれている。22年度は高校41回、大学・短大・専門学校8回を含む94回開催され、対象者は7336人だった。回数、対象人数は年々多くなっているが、大きな成果には結び付いていないのが実情だ。地道な努力を継続すると同時に、寒河江高生のチャレンジのような従来にない視点の活動を支援するなどして、裾野を広げたい。

 献血に限らず、若い世代に社会的課題に関心を持ってもらうのは難しい。今回のワークショップは、解決策を若者自身が考えた点が画期的であり、モデルケースになり得る。若者が主体となって活動できる環境づくりは今後より重要になる。学習活動とリンクさせながら若者が社会と接する機会を増やしてはどうか。