キレイになって能登に笑顔送ろう 全国30店の美容室で募金すると被災地の客が1000円割引に(2024年2月21日『東京新聞』)

 全国各地の美容室で能登半島地震への義援金を募り、集まった善意を被災した能登地方の美容室の地元客に還元する試み「能登へキレイ送りプロジェクト」が始まった。義援金を活用して、参加する能登の美容室を訪れた客の料金を1人1000円割り引く仕組み。石川県七尾市と東京都の美容師が連携し、美容を通じて支援の輪を広げている。(大野沙羅)
地元客と談笑する美容師の伊藤昇さん=石川県七尾市生駒町で

地元客と談笑する美容師の伊藤昇さん=石川県七尾市生駒町で

◆七尾と東京の美容師が発案

 企画したのは、七尾市生駒町の「リアルヘアカッティングYOU」のオーナー伊藤昇さん(65)と東京都中野区の美容室「I WANNA GO HOME CONCENT」のオーナー上村英明さん(49)。2人は、約20年前から「ドライカット」という技法の講師会を通じて交流があった。地震後、被災した美容室が150店近くあると見込まれ、伊藤さんが「復興に向けて継続的に何かできないか」と相談したのが始まりだった。
 プロジェクトは、能登の美容室の利用を促進し、地元客の経済的支援にもつなげるのが狙い。1月中旬から、上村さんが交流サイト(SNS)などで「あなたからのキレイが能登の皆さんのキレイと笑顔に変わる」と全国に呼びかけ。北海道から九州地方まで約30店が賛同し、店に募金箱を設置することになった。上村さんによると、義援金の使い道が分かりやすいことも好評で、店では1カ月弱で3万円が集まった。集まった義援金は各店が月締めで専用口座に振り込み、伊藤さんを通じて参加する能登の店で活用される。
能登地方のプロジェクト実施店の目印=石川県七尾市生駒町で

能登地方のプロジェクト実施店の目印=石川県七尾市生駒町で

◆被災地の女性「ありがたい」

 17日には、七尾市内の5店が地元客への割引を始めた。約3カ月ぶりに伊藤さんの店を訪れた輪島市河井町の中田智子さん(63)は自宅に住める状態ではあるが、断水が続いている。「20年近く通っているので再開しているだけでうれしかった。いろいろとお金がかかるので(割引は)ありがたい」と喜ぶ。伊藤さんは「奥能登まで実施店を増やし、能登の復興につなげていきたい」と語った。
 義援金は今後、被災した美容室の再開や来店できない被災者への支援にも役立てる。