輪島塗、珠洲焼…復旧はまだだけど「元気にならないと」 いしかわ伝統工芸フェアに能登から多くの出展者(2024年2月17日『東京新聞』)

 石川県内の伝統工芸品を展示する「いしかわ伝統工芸フェア2024」が16日、東京国際フォーラムで18日までの日程で始まった。能登半島地震の復旧がままならない中だが、来場者は被災地支援の思いを込めて輪島塗の箸や陶器などを買い求めていた。

◆「輪島塗で発展してきた町だから」

 特設会場には九谷焼加賀友禅など約40店舗の伝統工芸品が集まった。能登半島地震の影響で出展を取りやめた店舗や避難所から駆けつけた参加者もいた。
応援消費を呼びかけるバナーと輪島塗(手前)=16日、東京都千代田区で(由木直子撮影)

応援消費を呼びかけるバナーと輪島塗(手前)=16日、東京都千代田区で(由木直子撮影)

 輪島塗の塩安漆器工房の塩安真一さん(71)は「蔵はグチャグチャ。会社の床は割れている。職人さんも金沢のビジネスホテルなどに2次避難している」と現状を語りつつも「輪島塗で発展してきた町だから、輪島塗が元気にならないといけない」と出展した。赤や緑に鮮やかに塗られたアクセサリーや塗り箸に来場者が殺到していた。
珠洲焼を手にする陶芸家の林春香さん

珠洲焼を手にする陶芸家の林春香さん

 珠洲(すず)焼を手がける若手の陶芸家も参加した。23年5月の奥能登地震からの復興の最中に能登半島地震が発生。焼き窯のある珠洲市陶芸センターの屋根や煙突が崩れ、珠洲焼の新作が作れない状況だ。林春香さんは、「金沢市のトランクルームに保管していた作品を持ってきた」という。
地震で崩れた珠洲焼の施設=林春香さん提供

地震で崩れた珠洲焼の施設=林春香さん提供

 同じく珠洲焼作家の中島大河さん(29)は、自宅と工房が地震で全壊し、金沢市の実家で避難生活を余儀なくされている。「車中泊している友人もおり、まだ被災は続いている」と話す。水道などインフラや住居の復旧など、物をつくる以前の問題がまだ解決していない。作品づくりに打ち込める環境が戻ることを願っており「珠洲は良いところなので、またがんばれる」と話す。(白山泉)