(2024年2月20日『秋田魁新報』-「北斗星」)

 東京・市谷の防衛省敷地内には旧陸軍の地下壕(ごう)がある。幅4・6メートルで、天井まで4メートルの鉄筋コンクリート製の通路が約50メートルにわたって3本並行し、それらを2本の通路で結ぶ構造だ。第2次世界大戦中に造られ、陸軍大臣室や通信室もあったとされる

▼地上へつながる通気口は土中で曲折。外に光が漏れたり、外の爆風が壕内に入り込んだりするのを防ぐ狙いだ。地上部分は米軍に察知されぬようにと石灯籠でカムフラージュ。秘匿へのこだわりぶりに驚かされる

▼2キロ余り離れた永田町でも目くらまし術があったようだが、こちらは全くいただけない。自民党派閥の裏金事件。政治資金パーティーの収入を還流し、収支報告書に記載しなかった

▼世間にばれても具体的な使途を明かさず、裏金づくりの経緯もやぶの中。闇は闇のままにして幕引きを図り、政治資金規正法改正へ進んでしまえという思惑が見え隠れする。責任逃れとあくどさにあきれるばかり。確定申告の時期を迎えた納税者が「不公平だ」と憤慨するのは当然だ

▼国会では甘利明前幹事長が35日間の在任中に約3億8千万円もの政策活動費を受領したと指摘された。1時間当たりに換算すると約45万円。一体どんな使い方をしたのか

岸田文雄首相は国民の信頼回復へ「火の玉になる」と宣言しながら国会でははぐらかすような答弁を続けており、火だるま状態とやゆされる始末。政治不信払拭への気迫は感じられず、支持率回復の兆しも見えてこない。