裏金の実態解明 先延ばしは許されない(2024年2月21日『東京新聞』-「社説」)

 自民党派閥による政治資金パーティー裏金事件の実態解明が遅々として進んでいない。国民の信頼回復は政策推進の前提にもかかわらず、岸田文雄政権は党内調査に時間を費やし、政治倫理審査会の開催も先延ばしにしている。

 裏金づくりの実態解明はもちろん、再発防止策の立法化に向けた与野党協議も急務だ。これ以上の時間稼ぎは許されない。

 自民党は15日に公表した安倍、二階両派の議員ら約90人の聞き取り調査結果で、安倍派では裏金づくりが20年以上前から行われていた可能性に触れたが、具体的な経緯は不明。裏金の使途も会合費や人件費、手土産代といった項目だけが並び、内容は分からない。

 回答も匿名で記され、責任明確化の意思を欠くとの批判は免れまい。結果は弁護士チームが取りまとめたというが、聞き取りは党役員が担当しており、身内調査の甘さが露呈したというほかない。

 自浄能力を欠く自民党自身の調査には限界があり、まずは国会の政倫審での実態解明を求める。

 自民党は20日、会計責任者が在宅起訴された安倍、二階両派の塩谷立座長、武田良太事務総長が衆院政倫審に出席すると野党に伝えた。安倍派幹部の松野博一官房長官萩生田光一政調会長ら、5年間で約3500万円の不記載があった二階俊博元幹事長の出席なしに実態を解明できるのか。

 党総裁でもある首相は、安倍派幹部や二階氏が出席を拒むなら、離党勧告も辞さない覚悟で実態解明と再発防止に臨み、必要ならば憲法国政調査権に基づく参考人招致や証人喚問にも同意するよう党執行部に促さねばならない。

 政倫審は実態解明の第一歩に過ぎないが、自民党は開催を渋り、2024年度予算案の衆院採決への同意を野党から引き出す駆け引きに使っているように見える。

 首相は今国会での政治資金規正法改正を明言したが、その内容を具体的に示していない。予算を成立させ、6月の通常国会会期末まで野党の追及をかわせば、企業・団体献金禁止や政策活動費廃止などの抜本改革は回避できると考えているのではないか。

 報道各社の世論調査で、内閣支持率が政権発足後最低を軒並み更新している。政治資金改革に対する首相の取り組みが不十分だと国民はみている。首相は厳しく受け止めるべきである。