わいせつ保育士/抜け道経由の復職防ぐ策を(2024年2月20日『福島民友新聞』-「社説」)

 子どもへの性暴力やわいせつ行為で処分された保育士について、氏名や生年月日などの記録を管理する国のデータベースが新年度に導入される。保育所認定こども園などが保育士を採用する際、記録の確認が義務付けられる。

 保育士として働くには国家資格を取得し、都道府県に登録する必要がある。子どもへのわいせつ行為で処分されれば登録を取り消せるが、これまで取り消し記録を確認するシステムはなかった。

 子どもを狙う性犯罪者の中には、刑事処分を受けても同様の犯行を繰り返す人がいる。再犯の恐れのある人を保育の現場から遠ざけ、子どもを守るため、データベースを導入する意義は大きい。

 データベースには、刑事処分された人に加え、示談して刑事事件にならなかった事案でも都道府県がわいせつ行為と認定すれば、記録が掲載される。一方、保育士の処分が保育所内での対応にとどまり、登録の取り消しを担う都道府県と情報が共有されなければ記録されない。資格を保有したまま別の施設に転職する恐れがある。

 再犯の防止には、わいせつ行為を犯した人の適切な処分と、情報の確実な記録が欠かせない。保育所などがわいせつ事案を軽視したり、外部に知られるのを避けるために問題を隠したりしてできる抜け道をふさぐことが重要だ。

 幼稚園や小中学校などの教員免許が失効した人のデータベースは1年ほど前に導入された。しかし、現在のシステムでは保育士登録と教員免許の双方の取り消し情報を確認することができない。元教員が保育士資格を取り、保育所などに就職するリスクがある。

 記録を確認できる対象範囲の拡大を求める意見が、保育関係者らに根強くある。政府は、子どもと接する幅広い仕事で性犯罪歴を確認する制度「日本版DBS」の創設を検討しているものの、導入の見通しは立っていない。

 システム上の抜け道からの復職を許してはならない。国には、保育や教育の枠組みを超えて性犯罪歴を確認できるよう、データベースの改善が求められる。

 少ない保育士で多くの園児を見なければならないのが保育所などの現状だ。トイレや着替えなどの際に保育士と子どもが1対1になりやすく、他の職員の目が行き届きにくくなる場面は少なくない。

 再犯の恐れがある人を現場から遠ざけることに加え、隠れて行われる性犯罪の早期発見や未然防止が不可欠だ。職員の増員や防犯カメラの導入など、子どもを守る手だてを尽くす必要がある。