「詐欺」総合対策 外資SNSを突き動か(2024年6月24日『産経新聞』-「主張」)

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犯罪対策閣僚会議で発言する岸田文雄首相(中央) =18日午前、首相官邸(春名中撮影)
 悪化の一途をたどるSNS投資詐欺・ロマンス詐欺、特殊詐欺の被害をどう抑えるか。政府が「国民を詐欺から守るための総合対策」を犯罪対策閣僚会議で決定した。
 電話で家族の情に訴え、金銭を騙(だま)し取る特殊詐欺は一部、強盗に変質して社会不安を増幅させた。その被害額を昨年、新たに台頭したSNS詐欺(投資詐欺、ロマンス詐欺)が抜いた。「通話」や「受け子の対面」というリアルが介在する特殊詐欺に比べ、非対面で完結するSNS詐欺は対処がより難しい。
 今年に入りSNS詐欺はさらに悪化し、1~4月の被害(3340件、418億4千万円)はすでに昨年1年間の規模の9割となっている。喫緊の課題はSNS詐欺被害の8割を占める投資詐欺の抑止だ。
 SNSで著名人に成り済ました偽広告が投資詐欺の誘導元になっており、総合対策は広告管理の強化が柱だ。広告の事前審査の基準策定と公表、広告主の確認強化を事業者に要請する。海外事業者を念頭に、日本語や日本文化を理解する人材の十分な配置も求め、実効性ある審査体制を整備させる。
 詐欺広告の迅速削除を実現し、捜査機関の照会に応じる専門窓口の設置も要請する。
 米メタのフェイスブック、インスタグラムなどを通じて詐欺に遭うケースが多いが、詐欺広告の削除要請にメタの反応は鈍い。削除で被害激減が見込まれるため、政府がいかに迫るかがカギだ。国民の財産を守るため、毅然(きぜん)と対峙(たいじ)してほしい。
 総合対策に強制力はない。要請にとどまるが、政府には粘り強い対応を求めたい。対策をとったというのなら進捗(しんちょく)を、「できない」というのなら「いつならできるか」を明確にさせ、その工程を細かく共有させるぐらいの関与をすべきだ。
 国民を騙す詐欺広告は事業者の売り上げになっている。この理不尽な現実を理解させよ。
 総合対策を決定した犯罪対策閣僚会議は平成14年当時に最悪だった犯罪の発生状況を改善させた実績がある。この場で国、企業、社会が認識を一致させ、やるべきことをしたからだ。だからこそ今回、海外SNS事業者の歩み寄りがカギなのだ。
 それでも行動がみられず改善しないのなら、法規制および摘発をためらうべきでない。