SNSを使った投資詐欺への対策を急げ(2024年4月22日『日本経済新聞』-「社説」)

フェイスブックなどの広告を悪用した投資詐欺の被害が広がっている=ロイター

 SNSなどのインターネットサービスを悪用した投資詐欺の被害が広がっている。詐欺は犯罪であり、太くなりつつある貯蓄から投資への流れにも水を差しかねない。事業者は社会的な責任を自覚し、対策を急ぐべきだ。

 著名人になりすまして投資を呼びかける広告は2022年ごろからフェイスブックなどで目立ち始めた。広告をきっかけに被害者に接触し、出資や手数料といった名目でお金を振り込ませるのが一般的な手口だ。

 警察庁によると、23年にこうした「SNS型投資詐欺」の被害総額は約277億円に上った。年後半に急増し、現在も深刻な状況が続いているとみられる。40〜60代の被害者が多く、1人で1億円超の被害に遭う事例も相次いだ。

 米メタなどのSNS事業者はネット広告を簡単に出せる仕組みを整え、利用企業の裾野を広げた。一方、人工知能(AI)の発達で広告の作成が容易になり、翻訳機能も高度化したことで国際的な詐欺集団による悪用を許した。

 米国では生成AIの急速な普及を背景に、ディープフェイクと呼ぶ精巧な偽動画を作る技術を悪用して無断で著名人を「広告塔」にする動きも表面化している。一刻も早い対策が求められている。

 まず、重要になるのはSNS事業者などが詐欺目的の広告の取り締まりを強化することだ。各社は技術の進化が速く量も多いため困難が伴うなどと主張しているが、監視担当者の増員などで状況は改善するはずだ。

 メタなどは米国市場を優先し、英語以外の言語への対応を後回しにしてきた経緯がある。こうした姿勢では利用者や広告主の支持を失い、グローバルな事業展開で後れをとると自覚すべきだ。

 当局が監視を強めることも不可欠だ。詐欺広告の放置は詐欺のほう助に当たるとの指摘がある。現行のルールに基づいて積極的に捜査すべきだ。事業者が十分な対策を講じないのであれば、欧州のデジタルサービス法のような強制力が伴う措置も検討課題になる。

 利用者による警戒も欠かせない。SNSの広告枠は友人や知人による投稿と似た体裁をとり、違いを分かりにくくしている。まず、広告と一般の投稿を区別し、広告全般を注意深く見る習慣を身につけたい。振込先が個人名義の口座の場合には疑ってかかるといった姿勢も重要だ。