女性の活躍阻む根本の改革が欠かせない(2024年6月24日『日本経済新聞』-「社説」)

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男女ともに力を発揮できる基盤を整えたい(東京・丸の内)
 日本の立ち遅れを改めて示したといえる。男女平等の実現度合いを示す世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数で、日本は146カ国中118位だった。過去最低の前年(125位)よりはわずかに改善したとはいえ、主要7カ国(G7)で最下位だ。
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 この指数は、経済、教育、健康、政治の4分野で評価される。日本は発表が始まった2006年以降、低迷が続いている。女性の力を阻む根本的な要因に目を向け、改革を急がなければならない。
 なかでも大きな課題は政治と経済だ。23年9月の内閣改造では、5人の女性が閣僚に就いた一方で副大臣政務官は当初、ゼロだった。国会議員に占める女性の割合も衆院は1割にとどまる。
 女性の政治家が増えない背景には「政治は男性のもの」という根強い意識や、先進国のなかで著しく女性に偏る家事・育児分担などが挙げられる。政治家は有権者や同僚議員からハラスメントを受けることも多いとされる。
 男女の候補者数ができる限り均等になることを目指した法律が18年にでき、各党の取り組みも広がっている。だが、ペースは遅い。こうした現状の打破には、候補者などの一定割合を女性にすると義務付ける制度を設ける案も含め、幅広く踏み込んだ議論が必要ではないか。
 対策が急務なのは、経済も同様だ。日本は女性管理職が少なく、男女の賃金格差も大きい。企業が女性の力を生かせていないことの表れだ。女性個人にとっても収入の少なさは、いまの生活だけでなく老後の貧困リスクを高める。
 政府は東証プライムに上場する企業の女性役員比率を30年までに30%以上にする目標をもつ。育成・登用を着実に進めていく必要があり、賃金格差の是正に向けた取り組みも欠かせない。
 いずれも、職場全体の意識と働き方を見直さなければ、実効性のあるものにはならない。部下が男性か女性かで無意識に育成の仕方に違いがでていないか、硬直的な長時間労働やそれを評価する職場風土が残っていないか。企業が取り組むべき問題は多くある。
 政府は03年、指導的地位の女性割合を30%程度にする目標を初めて掲げた。20年がゴールだったが、ずれ込んでいる。多様な人材が活躍できる基盤づくりは社会を活性化させ、成長につながる。抜本的な改革に踏みだすときだ。