機能性表示食品 被害を広げぬ対応強めよ(2024年5月31日『産経新聞』-「社説」)

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小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」
 小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分を含むサプリメント健康被害問題で、消費者庁厚生労働省が機能性表示食品を扱う事業者への規制を強める対策を検討している。
 事業者が健康被害情報を行政に報告するよう義務付けることなどを定める方向だ。被害拡大を防ぐための当然の措置である。
 機能性表示食品は健康に寄与する機能をうたいながら、安全性などでの国の審査はない。だが、深刻な被害がある以上、国は関与を強めるべきだ。安全性への疑念解消へ実効性のある取り組みを官民で徹底したい。
 小林製薬は最初に症例を把握してから報告までに2カ月以上もかかった。対応の遅れで被害が拡大したことは教訓だ。
 厚労省などの対策案では製品と健康被害との関係が疑われると判断された時点で、症状の重さにかかわらず、事業者は保健所などに報告する義務を負う。違反すれば営業禁止などの処分をできるようにする。現状では報告は努力義務にすぎない。報告すべき内容や期限を事業者に明示することも重要だろう。
 保健所に報告された情報は厚労省が集約し、分析や評価を加えた上で定期的に結果を公表する。しかし、被害の拡大を防ぐためには、事業者からの報告があった段階で、速やかに公表すべきではないか。
 消費者庁も専門家検討会の提言を受けて事業者に求める対策を検討している。健康被害の報告義務化に加え、検討会は製造・品質管理で医薬品と同水準の認証取得も提案した。原料仕入れから出荷までの品質管理基準「GMP(適正製造規範)」の取得を義務化するものだ。これまでも取得が推奨されてきたが徹底されていない。医薬品並みの義務化を検討してほしい。
 このほか、健康被害への対応については、事業者だけではなく医療機関にもさらなる関与を促したい。機能性食品の評価や分析を強化するため、国立医薬品食品衛生研究所などの体制を充実させることも必要だ。
 今回、政府が検討しているのは機能性表示食品だ。だが、特定保健用食品(トクホ)や、それ以外のサプリメントも、継続的に摂取され、製造段階で成分が濃縮されやすい特徴は同じである。安全性の確保に必要な措置を今一度検証し、統一感のある対応を講じるべきである。