学歴詐称疑惑】告発記者会見に“乱入”、小池都知事を援護射撃する「元カイロ大副学部長」の正体(2024年7月4日『JBpress』)

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小池百合子東京都知事(写真:Pasya/アフロ)
 (黒木 亮:作家)
 去る6月18日、小池百合子東京都知事学歴詐称刑事告発し、記者会見を開いた小島敏郎氏に対し、東京国際大学教授のイサム・ハムザ氏(カイロ大学名誉教授)が、質疑応答セッションで真っ先に手を挙げ、「学生時代に小池氏に学内で会ったことがある」「小池氏の卒業証明書は本物」などと、長々と力説した。

 

 

 
 一般の日本人にも開催がほとんど知られていない記者会見のことを一介のエジプト人学者がどこからか聞きつけ、参議院議員会館内の会見場に入り、小池氏擁護論を展開したことに胡散臭さを感じた人は少なくない。
■ 同じ穴のムジナ
 端的にいうと、このイサム・ハムザという人物は、小池氏の「手駒」の一人だ。本人は「誰に頼まれたわけでもなく、自分の意思で(会見に)来た」と語ったが、小池氏サイドによって会見場に送り込まれたと考えられる。
 ハムザ氏は、カイロ大学文学部日本語学科の第1期生(1978年卒業)で、同大学で日本語学科長などを務めた後、JICA(国際協力事業団)が20億円の無償資金協力(贈与)によってエジプト北部のアレクサンドリア市に設立したエジプト・日本科学技術大学で2018年からリベラルアーツ・カルチャーセンター長を務めていた。要は日本国民が払った税金で飯を食べていた人物だ。
 8年前に小池氏が都知事に初当選したとき、同氏が祝福のメッセージを送ったことは【「カイロ大卒業」を取り繕うエジプトの小池人脈】という記事に書いたとおりだ。
■ カイロ大学関係者の懐柔に腐心
 小池氏は国会議員時代、しょっちゅうカイロ大学を訪問し、日本語スピーチコンテストの審査委員を務めるなどして、同大学関係者の懐柔に腐心してきた。コロナ禍前の2019年3月に行われたスピーチコンテストでは、前回の都知事選前後に小池氏を熱心に擁護したアーデル・アミン・サーレハ日本語学科長、イサム・ハムザ氏、ハムザ氏と日本語学科で同期のエジプト人教授らが審査委員を務めていた。
 ちなみにハムザ氏と同期のエジプト人教授は、久留米大学教授として5年間の任期が終わったとき、何とか日本に残りたいと小池氏に半ば泣きつくように相談したところ、小池氏は「わたしに任せて」とばかりに、すぐに東京国際大学に連絡を入れ、教授のポジションを確保したので、非常に恩義に感じているという。
 ハムザ氏は、同期のエジプト人教授とともに小池氏が親密な東京国際大学にいるわけで、すでにカイロ大学を定年退職している身で、日本がらみで飯を食べて行こうと思えば、日本の有力政治家である小池氏の歓心を是非買いたいところだろう。要は、同じ穴のムジナだ。
■ 政治権力を利用して「手駒」を確保
 政治家としての力を利用し、エジプト人学者には職や日本の外務省からの表彰、ジャーナリストには有力政治家のインタビューの斡旋、「小池閣下の当選を祈願して○○断ちをした」とツイートする新谷恵司氏のような通訳業者には通訳や翻訳の仕事の機会などを与え、いざというときに助けてもらうのが小池氏のやり口である。
 4年前、郷原信郎弁護士と筆者がFCCJ(日本外国特派員協会)で行った記者会見の際、質疑応答セッションが始まると真っ先に手を挙げ、同日にカイロ大学が出した声明文を、普通では考えられない早いタイミングで事前にプリントアウトし、持参して読み上げ、「この声明文についてどう思うか?」と訊き、訊かれてもいない小池氏のアラビア語を褒めたたえたカルドン・アズハリというシリア人記者もこの種の人物だ(詳しくは拙稿【「カイロ大学声明文」以外にもあった、もう一つの<隠蔽工作>】参照)。
 同記者は、今年4月、小島敏郎氏がカイロ大学声明発出に関する小池氏らの工作を告発したFCCJでの記者会見でも、真っ先に手を挙げ、「あなたの言っていることは根拠のないゴシップだ」と小島氏を非難した。
■ 事実を無視した小池擁護論を展開
 ハムザ氏、アズハリ氏、新谷氏のような人物は、アラブ流で声高かつ大げさに小池擁護論をぶつ。
 しかし、手紙という物的証拠がある北原百代氏の証言、カイロで小池一家の面倒をみていた朝堂院大覚(本名・松浦良右)氏の証言、自身で「落第した」と2つの本に書きながら小池氏が4年で卒業したことになっている証明書類の矛盾、当時社会学科生全員に義務付けられていた卒論について「卒論はなかった」と都議会などで答弁した小池氏の嘘など、学歴詐称を疑う様々な論拠・証拠には一切言及しない。
 これではいくら小池擁護論をぶっても誰も納得しない。
■ 結局、疑惑を深めるだけ
 小池氏は学歴詐称疑惑の打ち消しに躍起になっており、告発の記者会見が開かれるたびにカイロ大学声明発出を工作したり、中東・アラブ関係の「手駒」を送り込んだりして、告発のインパクトを何とか殺ごうとしている。
 しかし、送り込まれた「手駒」の人々の主張には上記の通り、まったく説得力がない。また小池氏自ら反論せず、他人を送り込んで火消しをさせようとする姑息なやり口は、かえって疑惑を深めている。
 今回の都知事選でも、小池氏は当初、街頭演説を極力行わない方針で、テレビでの公開討論会も拒否している。これは学歴詐称疑惑の質問から逃げるためだ。
 その後、蓮舫氏や石丸氏ら他候補の追い上げに焦って、渋々街頭に出始めたが、「船上遊説」などで、やはり質問から何とか逃げようとしている。本当に卒業したというのなら、堂々と反論すればよいだけのはずだが。
■ エジプトに借りをつくり、国家安全保障に脅威を与える
 『カイロ大学』という著作もあるジャーナリストの浅川芳裕氏(カイロ大学オリエント言語学ヘブライ語専攻、1995年中退)は、小池氏はエジプト政府のために働く「エージェント」同然で、2016年に日本政府が発表した300数十億円に上る日本からのODA(政府開発援助)による教育支援「エジプト・日本教育パートナーシップ」の端緒を開いた可能性があると指摘している。
 また小池氏が、2020年にカイロ大学声明の発出工作を行い、それを在日エジプト大使館のフェイスブックに掲載してもらうよう依頼したことは、民主主義の根幹である選挙に外国勢力の介入を招いたと多方面から厳しく批判されている。
 最近、無責任なネットメディアがPV(ページビュー)稼ぎで、イサム・ハムザ氏の主張を垂れ流したりしている。
 しかし、小池学歴詐称問題は、経済が破綻状態(格付会社ムーディーズによる長期信用格付けはCaa1で、投資不適格の中でも相当下)で、日本政府から1円でもODA(政府開発援助)を引き出したいエジプト政府の利害がからむ話で、日本という国家に対する様々な危険性をはらんでいる。
 有権者が安易に垂れ流される「手駒」の出鱈目な主張や、小池氏の隠蔽工作に惑わされたりしないよう、警鐘を鳴らしておく。
黒木 亮
 
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