紅麹問題と機能性食品 事業者任せの制度検証を(2024年4月8日『毎日新聞』-「社説」)

「紅麹」サプリの健康被害問題を巡る関係閣僚会合を終えて取材に応じる武見敬三厚生労働相(左)と自見英子消費者担当相=首相官邸で2024年3月29日午後5時51分、宮間俊樹撮影

「紅麹」サプリの健康被害問題を巡る関係閣僚会合を終えて取材に応じる武見敬三厚生労働相(左)と自見英子消費者担当相=首相官邸で2024年3月29日午後5時51分、宮間俊樹撮影

 健康食品が人々の健康を損なうようなことはあってはならない。安全対策はどうあるべきか。この機に考えたい。

 小林製薬の「紅麹(こうじ)」サプリメントを摂取した人の被害が広がっている。機能性表示食品として初の死亡例も確認された。

健康被害の報告が相次ぎ大阪市が回収を命じた小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」=兵庫県明石市で2024年3月28日、石谷浩子撮影
健康被害の報告が相次ぎ大阪市が回収を命じた小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」=兵庫県明石市で2024年3月28日、石谷浩子撮影

 成長戦略の一環で2015年に導入された制度である。国の審査が必要な特定保健用食品(トクホ)よりも規制を緩和した。安全性や有効性の評価を届け出るだけで済む。新規参入しやすくした。

 今回の健康被害は、制度が抱える課題を浮き彫りにした。

 まず製造工程がきちんと管理されていたかどうかだ。一部原料から、本来は含まれていない「プベルル酸」が検出された。青カビなどが混入した可能性が指摘されている。

 サプリに関して、消費者庁の指針は医薬品と同水準の品質管理が「強く望まれる」としている。だが、製造した大阪工場は、そうした体制になっていなかった。

 健康被害の情報を得た後の対応も問題が多かった。小林製薬は「調査に時間がかかった」などと釈明するが、1月中旬に最初の症例を把握してから、国に報告するまで2カ月以上かかった。

 食品衛生法は原因物質が特定できないようなケースで報告を義務付けていないこともあり、公表や回収の遅れにもつながった。

 効果の表示も、法律で厳しく規制される医薬品と違って、事業者任せの部分が大きい。医薬品のような治療効果をうたう表現は違法だが、「体脂肪が付きにくい」「血糖値上昇を抑える」といった消費者の目を引く宣伝は可能だ。

 医師や薬剤師の指導なしに入手できるため、過剰な摂取につながるリスクがある。

 機能性表示食品の商品数はトクホの6倍超の約7000点に上る。市場規模は推計約6800億円に膨らみ、海外にも販路は広がる。ひとたび健康被害が起きれば影響は大きい。

 消費者庁は機能性表示食品のあり方を検討するチームを発足させた。5月末までに方向性を示すとしている。

 国民の健康に直結する問題である。安心して摂取できる仕組みを整える必要がある。