トランプ氏に有罪評決 不倫口止め裁判でNY陪審 大統領経験者で初(2024年5月31日『毎日新聞』)

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不倫の口止め料支払いをめぐる裁判に出廷したトランプ前大統領=米ニューヨークで2024年5月20日、AP
 トランプ前米大統領(77)が不倫相手に支払った口止め料を不正に会計処理したとされる事件で、東部ニューヨーク州の裁判所の陪審は30日、業務記録を改ざんした罪でトランプ氏に有罪評決を下した。大統領経験者が刑事事件で有罪評決を受けるのは史上初めて。バイデン大統領(81)と再対決する11月の大統領選が迫る中、裁判は「政治的な迫害だ」と非難してきたトランプ氏にとって打撃となりそうだ。
 トランプ氏は帳簿や請求書など34件の業務記録を改ざんしたとして起訴され、陪審は全てで有罪とした。陪審員12人が全員一致で決めた。量刑は判事が7月11日に言い渡す。トランプ氏は控訴するとみられる。
トランプ前大統領に対して有罪評決が下されたことを速報するCNNテレビの映像=2024年5月30日、西田進一郎撮影
 起訴状などによると、トランプ氏は初当選した2016年大統領選直前の10月下旬、不倫スキャンダルをもみ消すため、当時の顧問弁護士マイケル・コーエン氏(57)を通じて元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏(45)に口止め料13万ドル(約2000万円)を支払った。その後、親族企業「トランプ・オーガニゼーション」を通じてコーエン氏に小切手で弁済した際、会社の帳簿などの業務記録に「弁護士費用」と偽って記載し、会計処理した。
 コーエン氏に金が支払われたという事実に争いはなく、主要な争点はトランプ氏側が業務記録への記載内容を偽ったのかや、トランプ氏が不正な会計処理にどこまで関与したかだった。
 検察側は、トランプ氏が大統領選で不利になる情報を有権者に隠すために、情報を握りつぶす「キャッチ・アンド・キル」と呼ばれる隠蔽(いんぺい)工作を画策したと主張した。コーエン氏は公判で、立て替えはトランプ氏の「指示」だったと証言しており、検察側はトランプ氏が不正な会計処理を認識していたと強調した。
 一方、弁護側は「『弁護士費用』と記載された(コーエン氏からの)請求書に従って小切手を切り、帳簿にその通りに記しただけだ」と説明し、会計処理に不正はなかったと無罪を主張した。トランプ氏は不倫そのものを否定しており、裁判中は連日のように「(裁判は)政治的な魔女狩りだ」と報道陣に訴えていた。
 トランプ氏は今回の事件のほか、敗北した20年大統領選の結果を覆そうとした事件など三つの刑事事件でも起訴されている。いずれも無罪を主張している。三つの事件とも公判はまだ始まっていない。【ニューヨーク中村聡也】
 

トランプ氏に有罪評決、大統領経験者で初めて…米陪審「不倫口止め」公判(2024年5月31日『読売新聞』)
 
 【ニューヨーク=山本貴徳】米国のトランプ前大統領が不倫の口止め料を不正に処理したとされる事件の裁判で、ニューヨーク州地裁の陪審団は30日、業務記録を改ざんした罪でトランプ氏に有罪の評決を下した。大統領経験者が有罪の評決を受けたのは初めて。CNNなど米メディアが報じた。
 
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29日、米ニューヨーク州地裁の法廷に入るトランプ氏=ロイター
 量刑は別途、言い渡される。11月の大統領選で共和党の候補指名が確実なトランプ氏は、有罪になっても立候補は可能とされているが、勝敗のカギを握る無党派層の支持は減る恐れがある。
 トランプ氏は2016年の大統領選の前に、腹心だった元顧問弁護士を通じて、不倫相手の女性に13万ドル(約2000万円)の口止め料を支払い、それを隠すために業務記録に虚偽の内容を記載した罪に問われていた。トランプ氏は不倫も不正への関与も否定していた。
 市民から選ばれた12人の陪審員は、29日昼から有罪か無罪かを判断する評議を始めた。評決は全員の意見が一致する必要があり、約4時間半後に中断し、30日午前に再開していた。

トランプ氏に有罪評決 米大統領経験者として初 不倫口止め料裁判(2024年5月31日『産経新聞』)
 
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有罪評決を下されたトランプ前米大統領=30日、ニューヨーク(ロイター)
【ニューヨーク=平田雄介】トランプ前米大統領(77)が2016年の大統領選前、不利になるのを防ぐため弁護士と共謀して不倫相手の女性に口止め料を支払い、その事実を隠すことを意図して一族企業の業務記録を改竄(かいざん)したとされる事件で、ニューヨーク州地裁の陪審員12人は30日、全員一致で有罪評決を下した。
刑事事件で「有罪」となった米大統領経験者は初めて。トランプ氏が共和党候補指名を固めた11月の大統領選の成り行きに影響しそうだ。
トランプ氏の量刑は州地裁の判事が後日、言い渡す。高齢で初犯のため収監される可能性は低いとみられている。
トランプ氏は昨年3月の起訴時から「無実」を主張しており、弁護側は上訴するとみられる。
トランプ氏は他に、20年の前回の大統領選での敗北を覆すため連邦議会や南部ジョージア州の公的手続きを妨害したり、大統領退任時に機密書類を持ち出したりしたとして3つの刑事事件に問われている。3事件とも、11月5日の今年の大統領選の投票日までに有罪か無罪かを示す評決が出る見通しは立っていない。
トランプ氏は一連の事件を自らの再選を妨げる「政治的迫害だ」と訴える。口止め料事件の裁判で有罪か無罪かを話し合う評議が始まった29日、「マザー・テレサでも無罪にならないだろう」と先行きを悲観していた。
トランプ前米大統領の不倫口止め料事件
トランプ氏が2016年大統領選前、元ポルノ女優に06年の不倫を黙っていてもらう見返りとして弁護士に立て替えさせた13万ドル(約2千万円)の口止め料を巡り、17年に一族企業の会計を不正に処理したとされる事件。検察側は、トランプ氏が選挙で不利になるのを恐れて口止め料を支払い、不当な手段で当選したのを隠すために会計不正を行ったと主張した。トランプ氏は昨年3月、業務記録改竄の罪で起訴され、34の罪状に問われた。