「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国が国際社会で存在感を高めている。いかに関係を強化するか、日本の外交力が問われている。
中国やロシアは、主導するBRICSや上海協力機構を通じて連携強化を進めている。一方、ウクライナ戦争やパレスチナ紛争への対応を巡り、こうした国々から批判を浴びた欧米は、関係の立て直しを図ろうとしている。
日本にとっても、グローバルサウスとの関係強化は、国際社会での発言力を高める上で欠かせない。資源、食料、エネルギーの安定調達にもつながる。
求められているのは、理念と戦略を明確にすることだ。
岸田首相はブラジルで、中国などを念頭に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」の重要性を訴えた。民主主義や人権の押しつけを嫌う国々に配慮して、より共感を得やすい「人間の尊厳」を強調し、気候変動や貧困などの課題の克服に協力する姿勢も打ち出した。
協力を推進するため、政府開発援助(ODA)を戦略的に活用すべきだ。それぞれの国のニーズに応じた、質の高い支援を効果的に実施することが必要となる。予算の増額が難しい中で、地政学的な重要性などの観点からメリハリを付けた取り組みが望まれる。
互いの経済成長につなげる発想も重視したい。日本が育んできた技術力を生かし、製造業のサプライチェーン(供給網)に組み込んで産業を育成するといった施策が考えられる。
政府は昨年10月、グローバルサウスとの連携強化を省庁横断で話し合う会議を設置した。近く基本方針を取りまとめる。互恵的な協力を推し進めるための青写真を示すことが急務だ。