菅、麻生もブチギレで「岸田降ろし」が加速…次に反旗を翻す「意外すぎる議員」の名前(2024年6月26日『現代ビジネス』)

自民党の大物たちが次々と
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 第213回通常国会が終わり、衆議院が解散される可能性はひとまずなくなった。戦々恐々だった自民党内で、それまで抑えられていた「岸田降ろし」が蠢(うごめ)き始めている。
 
 その前兆はすでにあった。6月16日に新潟県新発田市内で開かれたパーティーで、斎藤洋明総務大臣政務官岸田文雄首相に退陣を求めた。斎藤氏が所属する志公会会長の麻生太郎副総裁も政治資金規正法改正問題に触れ、「将来に禍根を残す改革だけはやっちゃいかん」と岸田首相に苦言を呈した。
 平成研(茂木派)からも苦情の声が出ている。立憲民主党が提出した内閣不信任案の採決前に開かれた自民党代議士会で、対馬衆院議員が「本来は岸田総裁がこの場に来て挨拶すべきではないか」と訴えた。
 麻生氏も茂木氏も、2021年の政権発足以来、岸田政権を支えてきた。いわば「身内」といっていい存在だ。にもかかわらず、なぜこうした批判が噴出するのか。
 原因のひとつは岸田首相の“独断”だ。今年1月に岸田首相は唐突に派閥解消を宣言した。現行では「20万円超」であるパーティー券購入金額購入公開基準についても、自民党が主張する「10万円超」から公明党などの「5万円超」案に妥協。公明党を引き入れることで、岸田首相は政治資金規正法改正案を会期内に成立させたかったのだ。だがこれが、「5万円超」に反対する麻生氏に火をつける。
 そもそも麻生氏には「岸田政権の産みの親は自分」との自負がある。2021年の総裁選では、「河野太郎を貸してくれ」との菅義偉首相(当時)からの依頼を断り、岸田支持を明らかにした。
 おかげで岸田首相は総裁選で勝利し、総理大臣の地位を手にした。岸田政権を支えるのは、元首相で副総裁の麻生氏と外相から幹事長に転じた茂木敏充氏で、それ以降、この3人のトロイカ体制で政権は運営されていく。
前首相までもが
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 しかしこれは同床異夢だったのだろう。岸田首相は自分が手綱を握っていると信じていたが、麻生氏にすれば岸田首相に主導権を渡した覚えはないということか。しかも岸田首相は長期政権を夢見たが、茂木氏は次期総裁選に意欲を燃やす。そして麻生氏は岸田首相が6月13日から15日までG7サミット出席のためにイタリア・プーリア州を訪問していた最中、野心を隠さなくなった茂木氏と会食している。
 もっともイタリアから帰国後の6月18日、岸田首相と麻生氏は都内ホテルで会食した。冒頭で述べた「新潟事件」の直後のことだ。会場に入る時には顔がこわばって見えた岸田首相だが、会食を終えた後はずいぶん和らいだようだった。
 だが一難去ってまた一難。今度は菅義偉前首相が6月23日に配信されたインターネット番組で、「ニューリーダーが出てくるべき」とぶちあげ、次のように述べている。
 「岸田首相自身が裏金事件の責任に触れずに今日まで来ている。そのことに不信感を持っている国民は結構多い」
 いまだ尾を引いている「裏金問題」は、清和会のパーティー券販売問題から始まった。「5人衆」など元清和会のメンバー39名には処分が下され、事務総長を務めて責任が重いとされた塩谷立衆院議員と世耕弘成参院議員が、離党勧告を受けて自民党を離れた。
 岸田首相が会長を務めた宏池会も、収支報告書記載漏れで事務局長が在宅起訴された。だが派閥のトップだった岸田首相自身は、党の代表としてさえ、何の「けじめ」もつけていない。
 そうした態度が国民、そして党内の不満の原因になっている。岸田首相は6月21日の会見で次期総裁選に出馬する意向を表明したが、果たして現在の難局を乗り越えることはできるのか。
再選を望むのはたった3県のみ
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 実際に朝日新聞が全国の自民党都道府県連幹事長宛てに行ったアンケートによると、次期総裁選で岸田首相の再選を望むのは、茨城県広島県、福岡県の3県のみだった。広島県は岸田首相自身の地元であり、福岡県は宏池会の名誉会長を辞したものの、いまだ影響力を保持する古賀誠自民党幹事長が控えており、さらに岸田首相の最側近である松山政司参院幹事長の地元でもある。
 一方で、「望まない」と回答したのは、岩手県静岡県、愛知県、岐阜県そして岡山県で、興味深いのはポスト岸田の呼び声が高い上川陽子外相が所属する静岡県が入っている点だ。上川氏は派閥解消前に宏池会に所属していた。
 ポスト岸田を狙う林芳正官房長官が所属する山口県は、どちらでもなかった。だが官房長官は首相を補佐する立場であり、その官房長官が所属する県連が積極的に現首相の続投を望まないというのは、岸田首相にとって現実は厳しいことが伺える。
 6月19日に行われた党首討論で、国民民主党玉木雄一郎代表から「四面楚歌ではないか」と聞かれ、岸田首相は「そうは感じてはいない」と否定して持ち前の“鈍感力”を遺憾なく発揮。しかし危機はじわじわと忍び寄っている。
 「我々は衆院選が11月に行われると想定している。9月末に総裁選が行われ、その後すぐに臨時国会を召集。急いで補正予算を上げた後、いよいよ解散だ」
 ある公明党関係者が耳打ちしてきた。衆議院の任期は2025年10月末だが、その夏には東京都議選参院選が重なるため、同党にとって非常にハードな選挙戦が強いられる。だから本音では、衆院選はなるべく年内に行ってほしいというわけだ。
 だから、秋に予定された同党の党大会は、延期されるかもしれない。同党の山口那津男代表は6月18日の会見で、「(党大会は)9月に開催することが基本」とする一方、情勢に変化があれば日程をずらす可能性にも言及。いちおう岸田首相の顔を立てつつ、現実的に対応する方針を示した。
 周囲はじわじわと固められている。「四面楚歌」の元となった西楚の覇王・項羽は、天運を悟って「時利あらずして、騅逝かず」と嘆いた。岸田首相は自分の天運をいつ悟るのか。
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安積 明子(政治ジャーナリスト)