「全中大会」の競技削減 生徒の意欲そがぬ対応を(2024年6月26日『毎日新聞』-「社説」)

キャプチャ
全中大会からの除外が決まった新体操。写真は2021年大会の団体で優勝した東京・花畑中の演技=エスフォルタアリーナ八王子で2021年8月19日
 部活動に打ち込む生徒のやる気をそがない工夫が求められる。
 中学スポーツの日本一を決める「全国中学校体育大会(全中大会)」から9競技を除外すると、日本中学校体育連盟が発表した。
 水泳、体操、新体操、ハンドボールソフトボール男子、相撲、スケート、アイスホッケーの8競技は2027年度から、開催地との契約が残るスキーは30年度から除外される。
キャプチャ2
外部から派遣された指導者(右)にラケットの使い方を教わる卓球部員ら。部活動の地域移行が中学スポーツの課題だ=千葉市花見川区の市立幕張中で
 現在は夏季16競技、冬季4競技が実施されているが、その半数近くが廃止される。冬季大会は「雪と氷」の競技が全てなくなり、駅伝のみの開催となる。
 加盟校中、部活動を実施している学校が20%未満の競技が原則として外された。ソフトボール女子は20%を切っているが、在籍する生徒の数が2万5000人を超えていることを考慮し、例外として存続させた。
 今回の基準に照らせば、将来的に除外対象となりそうな競技は他にもある。都道府県などの大会で実施される競技は、各地の実情に応じて判断される。ただ、規模縮小の動きが地方にも波及する懸念は拭えない。
 背景には、少子化の急速な進行に加え、大会運営や引率に伴う教員の負担増がある。
 文部科学省は、昨年度から公立中学校の部活動を地域のクラブチームなどに移行させる取り組みを始めた。中体連主催の大会への出場も認めている。
 だが、移行には課題が山積している。水泳や体操、新体操などは民間クラブの活動が盛んだが、受け皿が十分でない競技もある。組織や指導者、練習場所が少ないためだ。保護者の費用負担も増える。
 今後、目標とする大会が減り、地域クラブへの移行も進まなければ、競技人口が一気に減少する恐れがある。全国レベルの選手が競い合う場がなくなると、ジュニアの強化にも影響が出てくるのではないか。
 1979年度から始まった全中大会は、各種競技の普及や選手の強化の点で重要な役割を果たしてきた。
 除外される競技の団体は、代替の全国大会を創設するなど、生徒の意欲をつなぎ留める改革を進めていく必要がある。