辺野古新基地をめぐり国が名護市と「沖縄県抜き」で協議…どうして? 市長は「基地使用協定」を要望(2024年5月16日『東京新聞』)

 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、政府と名護市は15日、工事の影響軽減などを話し合う協議会を初めて首相官邸で開いた。同市の渡具知(とぐち)武豊市長は建設後の新基地使用開始も見据え、市との間で「基地使用協定」を締結することも求めた。政府は辺野古新基地建設に反対する沖縄県の頭越しに協議を進め、なし崩し的に工事を加速させようとしている。(中沢穣、近藤統義)

◆名護市長「移設を認めるということではない」

 協議は、政府側の栗生俊一官房副長官や関係省庁の局長ら、名護市側の渡具知市長や新基地周辺の辺野古、豊原、久志(久辺3区)の3区長が出席し、1時間近く行われた。
 渡具知氏は終了後、記者団に、基地使用協定の締結のほか、工事に伴う交通渋滞の緩和や廃弾処理施設の撤去を求めたことを説明。政府側は協定について「適切に対応したい」と答えたという。渡具知氏は「市民の不安を払拭し、生活環境を守る観点から協議を行った」と話し、「移設を認めるということではない」と強調した。

◆政府は新基地建設を前提として説明

 一方、林芳正官房長官は15日の記者会見で、「住民の生活環境等への影響に関する名護市の懸念に真摯(しんし)に向き合い、適切な対応を講じる」と述べ、市での新基地建設を前提とした説明に終始した。
 政府は1月、県の反対を押し切る形で、辺野古新基地建設に関する代執行に踏み切り、護岸工事が本格化。これを受け、名護市は2月に「安全安心な生活環境の確保」(市担当者)に向け、協議の場を設けるように政府に求めていた。基地使用協定は、市が1999年に辺野古移設を受け入れた際の条件の一つだった。

◆政府と沖縄県に「対話の場」なく

 協議に参加していない沖縄県玉城デニー知事は会見で「(協議の)方向性は注視したい」と静観する姿勢で、県担当者は東京新聞の取材に「名護市から説明はなく、詳細を把握していない」と話した。政府と県との間では、普天間飛行場の負担軽減策を話し合うために宜野湾市を交えた作業部会があるが、玉城氏が求める対話の場は設置されていない。
 沖縄国際大の前泊博盛教授は「辺野古移設は名護市だけでなく、県全体の問題。頭越しに協議するのはおかしい」と批判。基地使用協定についても「県を抜きにして協定を結べば将来に禍根を残す」とも語った。