合理的配慮に関する社説・コラム(2024年12月30日)

合理的配慮(2024年12月30日『山陰中央新報』-「明窓」
キャプチャ
「合理的配慮」のハンドブック
 今年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害者への「合理的配慮の提供」が義務化された。今年はさまざまな会合への出席や取材の中で、この合理的配慮の必要性について聞く機会が多かった。
 障害の有無で不当な差別をしてはならないのは当然のこと、過重な負担のない範囲で同等のサービス、機会を提供することが求められる。ただ、頭では理解をしていても見過ごしていることは少なくない。
 つい先日、視覚に障害がある人から「残念だった」という話を聞いた。民間サービスの話ではなく、公的な「選挙公報」についてだ。11月の雲南市議選で、選挙管理委員会が、視覚障害がある人のために音声を媒体に吹き込んだ選挙公報を出した。21人の立候補予定者に原稿の提出を求めた結果、応じたのは17人だったという。一部の候補者については、望んでも情報が得られなかったことになる。
 国政選挙や都道府県知事選挙以外の選挙公報の発行自体は任意だから、問題はないかもしれない。ただ、合理的配慮の観点からは納得がいかない面がある。
 来年4月には島根県内で松江、出雲両市議選がある。両市の選管はこれまでも、音声付きの公報の発行に対応している。願わくば政治家を目指す人は合理的配慮の趣旨をよく理解し、視覚障害がある人に対して文字で見えるのと同等の「知る機会」の提供をしてほしいと、期待する。(万)