沖縄の陸自訓練場 知事の反対は理解できぬ(2024年2月26日『産経新聞』-「主張」)

 
木原稔防衛相は沖縄県玉城デニー知事(右)に同県うるま市陸上自衛隊の訓練場を建設する計画を伝えた。玉城氏は計画の白紙撤回を求めた=17日午後、那覇市 (大竹直樹撮影)

 木原稔防衛相が沖縄県庁で玉城デニー知事と会談し、同県うるま市陸上自衛隊の訓練場を建設する計画を伝えた。玉城氏は白紙撤回を求めた。

 安全保障政策は政府の専管事項だ。それに基づき沖縄の自衛隊は沖縄を含む日本の平和を守るために活動している。

 玉城氏は、県民の生命と財産を守るためにも、反対の姿勢を改めてもらいたい。

 中国の軍事的脅威が高まっている。だからこそ政府は、沖縄など南西諸島の防衛力整備を急いでいる。陸自の訓練場建設計画はその一環である。

 これに対し玉城氏は木原氏に「米軍基地も減らないのになぜ、これだけ自衛隊を急いで配備しなければいけないのか」と述べ、反対の意向を示した。

 この発言は理にかなっておらず、本当におかしい。

 南西諸島における自衛隊増強の必要性は、玉城氏自身が認めていたことではないか。

 玉城氏は衆院議員だった平成24年3月、衆院安全保障委員会で質問に立ち、「日米同盟の深化へ協力していく姿勢を示してもらいたい」と政府に求めた。南西諸島防衛のため「自衛隊のさらなる増強、人員の確保、装備の更新などは欠かせない」とも訴えた。

 日本を取り巻く安保環境は当時より厳しさを増している。知事になって自衛隊の増強に反対するのは理解に苦しむ。

 米軍普天間飛行場宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画では、政府と県との対立の影響で工事が遅れている。その原因の多くは、司法判断にすら従わない県側にある。

 木原氏との会談で玉城氏は、辺野古移設について「ただちに工事を中断し、対話に応じてもらいたい」と語った。だが、移設工事を巡っては、福岡高裁那覇支部が昨年12月、県に承認を命じる判決を下している。方針を転換すべきなのは玉城氏の方である。

 このような県の姿勢は、日本の守りを損ないかねず、中国を利することになる。

 一方で政府には丁寧な説明が求められる。

 木原氏は会談後、「地元と意思疎通を図り、南西方面の防衛力の抜本的強化に向けて成果を出していく」と述ベた。県民のためにも訓練場の建設を急ぐべきである。