全国知事アンケート 安保容認 負担に無関心(2024年4月10日『沖縄タイムス』-「社説」)

 名護市辺野古の新基地建設について、沖縄タイムス社と朝日新聞社は合同で、沖縄県を除く46都道府県知事にアンケートした。

 回答結果からは、「無関心」「当事者意識の欠如」「見て見ぬふり」といった言葉が浮かぶ。

 辺野古沿岸の軟弱地盤の改良工事で、国土交通相が昨年12月、玉城デニー知事に代わって沖縄防衛局の設計変更を承認した。この「代執行」に関し、9割以上の42知事が適否を明らかにしなかった。

 2000年の改正地方自治法の施行後、国が自治体の法定受託事務を「代執行」するのは初めてとなる。

 公有水面埋立法で権限を持つ玉城知事が地域の安全や環境を守る観点、そして選挙で示された民意から不承認とした処分を、国は覆した。

 地方自治を侵害する強権的な介入で、国と地方の大きな問題である。

 にもかかわらず、代執行の適否では「どちらともいえない」25人、無回答17人、「適切」3人、「どちらかといえば不適切」は達増拓也岩手県知事の1人だった。

 代執行は、国と地方を対等・協力の関係とする地方分権改革の趣旨に沿っているかとの問いには無回答31人、「沿っている」14人、「沿っていない」は阿部守一長野県知事の1人だった。

 「外交や安保は国の専管事項」という理由で、回答しない知事が目立った。

 安全保障政策には負担も生じる。沖縄に集中する基地負担を「他人事(ひとごと)」とみるような回答で疑問が残る。

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 こうした沖縄の負担を「軽減すべきだ」と答えた知事は21人だった。25人は無回答だから、回答した全てが負担軽減に理解を示している。

 その一方で、沖縄の基地を受け入れる意思があると答えた知事はゼロだった。「総論賛成、各論反対」の姿勢が如実に表れた。

 沖縄の米軍基地の多くは戦後、本土から移転された。その結果の集中にもかかわらず、半数以上の知事が無回答としたのは、あまりに当事者意識が欠けている。

 復帰50年に合わせた2022年の全国世論調査でも同じような結果が出た。

 沖縄の基地の一部を県外で引き取るべきだとの意見に「賛成」が58%、自分の住む地域への移設は「反対」が69%を占めた。

 米軍基地問題は決して沖縄問題ではない。日本の安保政策の中核をなすのであれば、日本全体で議論し、解決しなければならないはずだ。

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 アンケートの結果を受け、玉城知事は全国へ沖縄問題の発信を続ける考えを示した。

 基地負担の集中を解消するには、他の都道府県の理解と協力が不可欠である。

 自治体に対する国の指示権を拡充する政府の地方自治法改正案に、全国知事会は「対等関係が損なわれる」と慎重な対応を求めた。国の介入への地方の危機感といえる。

 外交や安全保障でもタブー視せず、地域の安全などに関わる問題であれば、国へ直言できるよう真の意味での地方分権を不断に求めてほしい。