そもそも
改憲が必要な切迫性はなく、裏金事件で信頼を失った
自民党には
改憲を主導する資格もない。
改憲に拘泥せず、暮らしの立て直しを優先すべきである。
通常国会では
衆院で9回、
参院で4回、
憲法審査会で実質的な議論が行われた。審査会での議論は2021年10月の岸田政権発足以降、
衆院で49回、
参院で21回に上る。
改憲に強い意欲を持っていた
安倍晋三政権より頻繁だ。
一部の条項では論点整理も行われている。特に、大規模災害などで国政選挙の実施が困難になった場合、国会議員の任期を延長する緊急事態条項創設を巡り、
衆院の自民、公明、
日本維新の会、国民民主各党と
院内会派「有志の会」の5会派は、慎重な
立憲民主党抜きで条文化を進めようとした。
もっとも現行
憲法は、
衆院解散後の緊急事態発生を想定し、
参院のみで国会の機能を維持する緊急集会規定を明記する。
参院側は同規定を重視し、自民内にも緊急事態条項創設に慎重論がある。
幅広い合意があると言い難く、
衆院の5会派が「数の力」による
条文化を断念したのは当然だ。
16年の
参院選後、衆参ともに
改憲に前向きな勢力が、国会発議に必要な3分の2以上を占める状態が続く。
衆院5会派の「立民切り」の姿勢には、多数であるが故のおごりがにじむ。
憲法審運営の基礎を築いた初代
衆院憲法調査会長の故
中山太郎氏は生前、
改憲勢力が衆参で3分の2以上になったことについて、与党内に芽生えた「いざとなったら押し切れる」との慢心が
与野党を分断し、建設的な議論を阻害していると指摘していた。
憲法はどの
政治勢力が権力の座に就こうとも従うべき
基本法。
改憲が必要だとしても、政権を担う可能性がある野党と幅広い合意を目指すことが当然だ。裏金事件を機に、
政権交代の可能性が取り沙汰されるならなおさら、多数派は慢心を捨てなければならない。