思わず笑ってしまう「クセすご」警察イラスト、元似顔絵捜査員「印象に残るよう心がけている」(2024年4月26日『読売新聞』)

 岡山県警岡山中央署入り口近くに設置されたコミカルなイラストが、物々しい警察署の雰囲気を和らげている。作者は同署地域課南方交番に勤務する山口聡一郎巡査長(36)。「テーマが伝わりやすく、印象に残るように心がけている」と、特技の絵を生かした啓発活動に力を入れている。(高田理那)

自転車の利用時にヘルメットの着用を呼びかけるイラストと作者の山口巡査長(岡山市中区の岡山中央署で)
自転車の利用時にヘルメットの着用を呼びかけるイラストと作者の山口巡査長(岡山市中区の岡山中央署で)

 桃太郎と仲間の動物がヘルメットの着用を促したり、漫才コンビが持ちネタと絡めて、自転車の盗難防止のために二重ロックを呼びかけたり。どれも一癖あってクスッと笑いがこみ上げてくるような内容だ。

 山口巡査長は岡山市東区出身。川崎医療福祉大学倉敷市)を卒業し、名古屋市児童相談所で嘱託職員として働いた後、2012年に岡山県警に転職。初任地の岡山西署では、交番勤務と並行して、事件の目撃者から顔の特徴を聞き取るなどして記録に残す「似顔絵指定捜査員」を約5年間務めた。

 中でも忘れられないのは、ひき逃げ事件で死亡した被害者の身元が分からず、霊安室の遺体から生前の顔を想像して描いた経験という。大型連休中に起きたため、勤務先などからの通報もなく、「一日でも早く気づいてもらいたい」との一心で描いた。インターネット上で公開すると、翌日に交際相手から問い合わせがあり、身元が判明した。「自分の絵が役に立った」と、自信につながった。

行政職員を募集するイラスト
行政職員を募集するイラスト
警察官を募集するイラスト
警察官を募集するイラスト

 署入り口近くのホワイトボードに描くようになったのは、岡山中央署に配属された23年4月。当時の馬場健史地域安全官の提案で始めた。以降、交通安全運動期間や警察官の募集期間など、そのときのテーマに沿ったイラストを、業務の合間に計約5時間かけて完成させているという。

 同年夏には桃太郎をモチーフにした水難防止の看板を制作し、用水路に面する保育園のフェンスに設置。今年の夏には、万引き防止を呼びかける4コマ漫画を啓発グッズにデザインし、商業施設前で配布する予定といい、活動は署外にも広がっている。

 「交番の業務との両立は大変だが、来署した人が足を止めて絵を見てくれていたと聞くと励みになる」。絵をきっかけに地域住民が警察に親しみを持ち、啓発やメッセージが伝わることを願って、山口巡査長は今日も絵筆を握る。