熱中症アラート 未曽有の猛暑に備える(2024年4月26日『東京新聞』-「社説」)

 
 経験したことがないレベルの暑さにどう対処するか。改正気候変動適応法が今月施行され、環境相による「特別警戒アラート」の発令など新たな熱中症対策が始まった。熱中症の搬送者は例年、5月の連休から急増し、直近で平均年1300人の命が奪われている。改正法に基づいて、お年寄りらを見守る体制を早急に固めたい。
 特別警戒アラートは、従来の警戒アラートより1段上で、翌日の気温や湿度などの予測値が一定の段階に達した際、午後に都道府県単位で発令する。データ上、これまで発令レベルに達したことはないというが、地球温暖化は予断を許さない。発令時には強い危機感で対処したい。外出は避け、運動やイベント、現場作業などは躊躇(ちゅうちょ)なく取りやめるべきだ。
 市区町村長は市民が猛暑をしのげるよう公民館や図書館、民間のショッピングセンターなどを「暑熱避難施設(クーリングシェルター)」に指定、特別警戒アラート発令時は一般開放を義務付ける。
 ただ昨年時点の調査で、設置済みの自治体は139市区町村にとどまる。猛暑は待ってくれない。設置を急ぎ、ロゴ=図(左)=やマーク=同(右)=が入ったのぼり旗やマップをつくるなど、シェルターの存在を市民に分かりやすく周知したい。
 アラートは行政のホームページや防災無線のほか、メール配信サービスでも確認できる。直接の注意喚起も必要で、改正法に基づき市区町村長が指定したNPOや企業などが高齢者らを訪ね、声掛けする仕組みも設けられた。
 大半の自治体がこれから団体の選定に入る段階のようだが、個人情報の取り扱いには十分注意しつつ、実施を急いでほしい。
 幼い子が車中に取り残され、熱中症で死亡する悲劇も毎年のように起きている。アラート発令時に限らず、「少しの時間なら」という油断は禁物だ。保護者が細心の注意を払うのは当然だが「熱中症弱者」と呼ばれる乳幼児やお年寄りらは、関係者だけでなく、官、民、地域を挙げて見守ることが大事だろう。危機意識を共有して未曽有の猛暑に備えたい。