危険な踏切 遮断機のない現状放置するな(2024年4月24日『読売新聞』-「社説」)

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 警報機や遮断機のない踏切で、通行人が電車にはねられる事故が絶えない。鉄道会社や自治体、国が連携を深め、こうした危険な踏切を一つ一つ減らしていく必要がある。
 群馬県高崎市の踏切で今月、近所に住む小学4年の女児が電車にはねられて亡くなった。踏切には警報機と遮断機がなかった。女児は、犬を追いかけて踏切内に入ったとみられている。
 こうした踏切は「第4種踏切」と呼ばれ、地域住民らが農作業や買い物の際、徒歩や自転車で行き来することが多い。地方を中心に全国で2400か所あり、毎年10人前後が事故で死亡している。
 多くは、通行人が電車の接近に気づかず踏切内に立ち入ったことが原因だとされる。イヤホンで音楽を聴いていたり、スマートフォンに気を取られたりしていて事故に遭う被害者もいるという。
 警報機や遮断機を設置することで、音や光の点滅などによって電車の接近を知らせ、踏切への誤進入を防がねばならない。
 危険な踏切の改修が進まないのは、工事に1か所当たり1500万~3000万円の費用がかかるためだ。鉄道会社の多くは経営が厳しく、二の足を踏んでいる。
 かといって、そうした踏切を廃止すると、住民は別の踏切まで遠回りを強いられる。鉄道会社側と住民側の利害が一致せず、意見がまとまらないことが多い。
 事態を打開するため、自治体が対応に乗り出すケースもある。
 高崎市は今回の事故を受け、市内の第4種踏切を廃止したり、警報機や遮断機を設置したりする方針を決めた。鉄道会社に費用の負担を求めず、市の予算と国の補助金でまかなうという。
 各自治体は踏切の安全対策を鉄道会社任せにせず、住民との協議などに積極的に関わるべきだ。国も事故の発生状況や通行量を踏まえ、どの踏切の対策を優先させるかなど、自治体や鉄道会社に具体的な助言を行う必要がある。
 迅速な対応が難しい踏切については、JR西日本が進める「簡易ゲート」の設置も一案だろう。
 普段は人が渡れないようにバーが下りていて、通行人が安全を確認したら、自分でバーを開けて通過する仕組みだ。費用は警報機や遮断機を設置する場合の1割程度に抑えられるという。
 新学期を迎え、通学に不慣れな子供らが事故に遭いやすい時期でもある。学校や家庭で安全教育を徹底し、踏切を渡る際の留意点をあらかじめ確認しておきたい。