自民党の本気度 改革の意志が見えない(2024年4月17日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 事件を起こした自民党が、まず踏み込んだ再発防止策を打ち出すべきだ。及び腰が目に余る。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法の改正に向け、自民党は独自案を作らないまま公明党との協議に入った。

 衆参両院に特別委員会が設けられ、規正法改正の議論が始まる。公明を含む各党は、独自の改革案を打ち出している。

 今国会中の法改正を明言する岸田文雄首相は、論点として(1)議員本人を含めた厳罰化(2)収入の第三者による監査徹底(3)デジタル化による政治資金の透明性向上―の検討を党内に指示している。

 にもかかわらず、自民は与野党の議論で土台となるべき考え方を明確にしない。改革に消極的だと受け取らざるを得ない。

 野党は、政治団体の会計責任者だけでなく議員も責任を負う連座制の導入や、使い道を公開する義務がない政策活動費の廃止、企業・団体献金の禁止といった改革案を示している。

 いずれも自民党内では後ろ向きな声が多い。ハードルの高い改革案を自ら打ち出すこともなく、小手先の法改正で「改革」を演出し、事件から国民の目をそらす思惑があるのなら見過ごせない。

 法改正の議論で前提となる裏金事件の実態解明も、全く進んでいない。自民党の自浄能力の欠如は明らかだ。

 自民党は事件に関係した議員を曖昧な基準で一斉に処分し、党内の混乱を招いた。離党勧告を受けた安倍派の塩谷立氏が「事実誤認が多々あり、真相究明が必要だ」とし、異例の再審査を請求する事態となった。

 結局、請求は認められなかったが、処分を機に内輪もめの様相になった要因は、実態の解明を置き去りにしたまま幕引きを急いだからに他ならない。

 共同通信社が実施した電話世論調査では、自民党の調査や国会の質疑を通じて裏金事件の実態が「十分解明されていない」との回答が9割を超えた。有権者の不信感は拭えていない。

 16日には衆院補欠選挙が告示された。裏金事件後、初の国政選挙となる。

 東京15区と長崎3区は、公選法違反事件や裏金事件で自民を離党した議員の辞職に伴う補選だ。

 選挙では「政治とカネ」が焦点になる。自民党が率先して裏金事件の原因と対策を明確に示すことが、当事者の政治責任であることを忘れてはならない。