皇后さま、天皇陛下と思いご共有 時代映す「ご一家像」、愛子さまご成長も力に 令和皇室の現在地 ご即位5年㊥(2024年5月1日『産経新聞』)

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令和3年の新年のビデオメッセージでお言葉を述べられる天皇陛下と皇后さま(宮内庁提供)
 
「私たちのお気に入りの写真はこれです」
昨年11月、国連大学(東京都渋谷区)で開かれた国際シンポジウム。生物多様性保全などについて講演した米バード大教授のフェリシアキーシングさん(58)との懇談の場で、天皇、皇后両陛下は、持参した1冊の写真集から数枚の写真を示された。
 
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【表でみる】皇后さまは療養を続けながら、公務に臨まれてきた
 
写真集は前年、キーシングさんが御所で初めて両陛下と面会した際、プレゼントした米ハドソン川周辺の写真を収めたもの。運河の研究をされていた天皇陛下のために選んだが、米国で学んだ皇后さまも懐かしそうにされていたという。
再会に際しての両陛下のお心遣いに、キーシングさんは「心から歓迎していただいていると感じた」と喜び、「非常に聡明(そうめい)な方々。日本と世界が直面するさまざまな問題に、お二方とも関心を持たれていた」と振り返った。
■寄り添う
「私たち」「陛下も」「雅子も」-。
お二方で共通の感想や意見を述べたり、互いを会話に引き込むようにしたりして話題を発展させていくのは、「両陛下らしいご懇談のスタイル」(宮内庁幹部)だ。
国賓客との御所での面会は一昨年から、陛下と主賓、皇后さまと配偶者がそれぞれ向き合う従来の配置から、全員で円卓を囲まれるレイアウトに変わった。懇談相手と共通の話題になるような写真をお二方で事前に選び、持参されることもある。
新型コロナウイルス禍で新年の一般参賀が見合わせとなった令和3年、陛下が出された新年のビデオメッセージでは、皇后さまが隣に並び、陛下に続いてお言葉を述べられた。皇后さまのお言葉の間、陛下も、言葉を重ねるように口元をかすかに動かされていた。
「何事もご一緒に。そこには、陛下の強いお気持ちがある」。両陛下に近い関係者は、そう推し量る。
皇后さまは平成15年から、療養生活を続けられてきた。代替わりで体調を懸念する声もあったが、この5年、すべての代替わり関連行事と地方訪問、外国訪問に、天皇陛下とともに臨まれている。
「自らも苦労された皇后さまが、人の痛みにも親身に寄り添うお姿が国民の共感につながっている」。皇室とメディアの関係に詳しい名古屋大大学院の河西秀哉准教授はそう指摘した上で、「陛下は皇后さまを支えつつ、頼りにされていると感じる。より対等な夫婦像は、時代とも親和性がある」と話す。
一方、「コロナ禍で制約されていた活動がようやく復活し、両陛下らしい新しいご活動が打ち出されるのはこれからではないか」と注視する。
■平和願い
「長女の敬宮(としのみや)愛子さまのご成長も、両陛下のお力になっているのではないか」。両陛下の和歌の相談役を務める永田和宏さん(76)は、そんな印象を持っている。
《広島をはじめて訪(と)ひて平和への深き念(おも)ひを吾子(あこ)は綴れり》
皇后さまは今年の歌会始で、こんなお歌を詠まれた。永田さんによると、「和」がお題だった今年の歌会始では当初、陛下も「平和」について詠んだ御製(ぎょせい)を用意していたが、皇后さまに「快く」(永田さん)譲られたという。
永田さんは、「平和は両陛下の共通の願い。そこに、子供だと思っていた愛子さまがいつの間にか成長し、加わられたことをお二方で喜ばれているお歌」とした上で、「愛子さまのご成長を通じ、ご一家としてもより強く、成長されていると感じる。そうした家族像を、国民も身近に感じるのではないか」と話している。