政治改革特別委 自民は透明化から逃げるな(2024年4月14日『中国新聞』-「社説」)

 自民党派閥の裏金事件を受け、衆参両院は「政治改革に関する特別委員会」を設置した。後半国会の最大の焦点となる政治資金規正法の改正に向けた議論の舞台となる。

 再発防止に向け、金の流れを抜本的に透明化する必要がある。「政治とカネ」問題のたび、小幅な改正で済ませてきた規正法は抜け穴だらけだ。いいかげん、徹底的に穴をふさぎ、誰もがチェックできる仕組みを確立すべきだ。

 規正法は政治活動を「国民の不断の監視と批判」の下に置くことを目的とする。非課税の特権を付す政治資金の出入りを、政治家が正直に申告することが前提だ。

 ところが、安倍派と二階派では派閥パーティー券の販売ノルマ超過分を収支報告書の収入に記載せず、所属議員らに還流して裏金化していた。

 安倍派の裏金づくりは組織的で、いつ始まり、安倍晋三元首相の死去後に誰が復活を決めたのか、真相は闇の中だ。派閥幹部は「知らぬ存ぜぬ」と繰り返し、還流を受けた議員は「秘書に任せていた」と保身に走る始末である。

 事件で悪用され、企業・団体献金の隠れみのになっているパーティーは、企業・団体の券購入禁止や購入者の公開基準引き下げに最低限取り組むべきだ。事件の反省に立てば全面禁止も視野に入ろう。

 収支報告書の不記載などで会計責任者らが立件された場合、政治家も処罰対象となる連座制の導入も欠かせまい。企業・団体献金は野党が主張するように禁止が望ましい。

 資金の透明化を考える上で見過ごせぬのは自民党幹部による脱法的行為である。

 茂木敏充幹事長らが資理管理団体から、支出の公開基準が緩い団体へ巨額の金を移していた。こうした使途隠しの操作を防ぐには、国会議員が持つ団体を一つに絞るか、政党支部資金管理団体の二つにすればいい。収支報告書のデジタル化も必要だ。

 岸田文雄首相の地元の政財界人が発起人となった就任を祝う会で、収益を首相の政党支部に寄付したようなケースも網をかけることが求められる。任意団体の名を利用した金集めの手段になりかねないからだ。

 加えて領収書要らずの「つかみ金」である政策活動費にも踏み込むべきだ。自民党幹事長には年間10億円前後が支出され、選挙で激戦区対策に使われたとの証言もある。野党は廃止、公明党は使途公開を求める。同じく領収書不要の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)も使途公開などを実現させたい。

 論点や野党案は出そろっているのに、自民党は独自案の作成に後ろ向きだ。この期に及んで「政治活動の自由」を口実に規制強化に抵抗する声も聞こえる。主体性のなさにあきれるほかない。

 首相は今国会中の規正法改正を明言し、一連の責任を「国民や党員に判断していただく」と述べた。小手先の改革にとどまったり、改正が先送りされたりすれば、政権は窮地に陥る。会期末は6月23日で時間は限られる。首相の覚悟が問われる。

 

【政治資金法改正】不信の深刻さを自覚せよ(2024年4月14日『高知新聞』-「社説」)

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、国民の政治不信は頂点に達している。「ザル法」といわれる政治資金規正法の抜け道をふさぐ真摯(しんし)な姿勢を求める。同時に、一向に進まない真相解明もうやむやにしてはならない。
 与野党が衆参両院に政治改革特別委員会を設置した。規正法改正の議論が本格化するのは大型連休明けになる見通しで、6月の国会会期末までに合意できるかが焦点になる。
 規正法には、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」目的と、「いやしくも国民の疑惑を招くことのないように」との基本理念がある。これほど法や国民への背信行為が絶えない状況だ。論点は多岐にわたる。
 連座制の導入は当然の改革になる。現行法は収支報告書の不記載などに会計責任者の罪を定めるだけで、政治家の共謀も立証が難しいとされる。裏金事件でも責任の大半は会計責任者や秘書が負わされた。
 しかし実際にカネを集め、使っているのは議員本人であり、罰則の対象が事務方だけなのはおかしい。報告書の不記載などが立件された場合に、「トカゲのしっぽ切り」に終わらない規定を国民は求めている。
 リクルート事件に端を発した30年前の政治改革で禁止を目指したはずの企業・団体献金も論点になる。野党側は政策決定がゆがめられるとして禁止を訴える一方、岸田文雄首相は「企業は寄付の自由を有する」と折り合っていない。
 政治資金パーティーの規制強化も問われる。野党側は開催の全面禁止や企業・団体によるパーティー券の購入禁止を要求。与党の公明党は購入者の20万円超から5万円超への公開基準引き下げを主張している。
 ただ、金権腐敗を根絶しようとした30年前の趣旨を考えれば、「抜け穴」となってきたパーティーは全面禁止が議論されて当然だろう。
 さらに自民党では幹部らが、国会議員関係政治団体から支出の公開基準が緩い「その他の政治団体」に巨額の資金を流し、使途の詳細がほぼ分からなくなる処理も行っていた。
 政策活動費も党幹部への支出が年間10億円を超すこともあり、使途を明かす必要がない「巨額の合法的裏金」との批判が強まっている。
 いずれも「国民の疑念を招くことのないように」という法の理念を踏まえ、国民が監視しやすい仕組みの構築、透明化が求められる。
 裏金事件の真相解明も忘れてはならない。岸田首相は安倍派幹部らの一斉処分を一区切りとし、制度改正論議に注力したい考えとされるが、国民の疑念は解消には程遠い。
 誰が、いつから主導したのかに加え、自民党議員らによる本当の使途も解明されていない。なぜ政治に金がかかるのか、裏金は何に使われたのかを究明することは、政治の在り方を問うことにもなろう。
 国民の政治不信の深刻さを自覚した議論が求められる。問題の本質に踏み込まないお手盛りの改革では、不信の払拭はあり得ない。