政治改革特別委に関する社説・コラム(2024年4月13日)

政治改革特別委員会 衆院で設置 憲法審は今国会初の自由討議(動画)

 

政治改革特別委 まず実態解明の徹底を(2024年4月13日『福島民友新聞』-「社説」)

 

 衆参両院は、自民党派閥の裏金事件を受け、政治改革特別委員会を相次いで設置した。
 戦後まもなく制定された政治資金規正法は、政治とカネを巡る不祥事が起きるたびに改正を重ねてきたが、なお抜け穴だらけだ。
 一時しのぎを続けてきた過去を反省し、二度とこのような事件を起こさないために、抜本改革に向けた議論を徹底してもらいたい。
 そのためにはまず、事件の実態解明を尽くすことだ。裏金づくりは、その目的や経緯、使途などが依然判明していない。
 問題の根源が分からなければ、それを防ぐ手だても曖昧になる。まやかしを放置してはならない。
 特別委での究明だけでなく、虚偽答弁に偽証罪が適用される証人喚問も早急に実現させるべきだ。
 約80人の裏金議員のうち政治倫理審査会に出席したのは9人しかいない。しかもいずれも「知らぬ存ぜぬ」を繰り返しており、説明責任を果たしたとは言えない。
 自民党内からは「特別委は裏金問題を追及する場ではない」との声が上がるが、不正を重ねた当事者の党から言う話ではない。真相究明に自ら努力するのが筋だ。
 岸田文雄首相は森喜朗元首相に電話し、裏金への関与はなかったと認定したというが、やりとりを含め根拠が明示されていない。
 森氏は裏金づくりの開始経緯を知る可能性がある人物だ。やはり本人の国会招致が必要だろう。
 規正法改正の論点は、野党からはほぼ出そろっている。
 会計責任者だけではなく政治家自身も責任を追う連座制の導入や、外部監査を通じた透明性の確保、政党から政治家個人に渡される政策活動費の廃止などだ。
 中でも企業・団体献金の全面禁止は、30年前の政治改革から積み残された課題である。
 政財界が癒着し、資金力の多寡によって政策決定がゆがめられるようなことがあってはならない。今回こそ決着をつけるべきだ。
 そもそも政治にカネがかかるとは本当か、だとすれば何が問題かの議論も突き詰める必要がある。
 問題はいまだに具体案を示さない自民党だ。首相は「火の玉になる」と宣言しながら、一向に党内論議を主導する姿勢が見えない。
 日本の代表制民主主義が根幹から揺らいでいることへの危機感が足りないのではないか。
 政権党としての政策推進の正当性が問われている。野党案を全て受け入れるくらいの覚悟がなければ、国民の信頼回復は望めまい。

 

政治改革特別委 全ての抜け道をふさげ(2024年4月13日『信濃毎日新聞』-「社説」)


 疑惑の解明なくして何を「改革」しようというのか。

 議論を厳しく注視しなければならない。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治資金規正法の改正を議論する政治改革特別委員会が衆参両院に設けられた。

 論点は、▽会計責任者だけでなく議員も責任を負う連座制導入▽政策活動費の扱い▽企業・団体献金の存廃▽政治資金パーティーの規制強化▽監査機能の強化―など多岐にわたる。

 岸田文雄首相は今国会中に法改正を実現すると明言しているが、各党の隔たりは大きい。

 自民党が政治改革の議論に絞るべきだと主張する一方、野党側は裏金事件も追及する考えだ。特別委の在り方からしても相違がある。議論の前提として実態解明を進めるのは当然のことだ。

 事件では、パーティー券の販売ノルマ超過分を政治資金収支報告書に正確に記載せず、安倍派の会計責任者や多額のキックバックを受けた議員らが立件された。

 自民党は関係議員を処分したが、裏金づくりが誰の指示で始まり、何に使ったのか、真相は全く分かっていない。

 歴代事務総長ら安倍派幹部は立件されず、「トカゲのしっぽ切り」との批判が上がった。

 肝心の自民党は法改正の独自案は作らず、公明党との協議に臨むという。本気度が見えない。

 規正法は、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」と目的を掲げる。「政治とカネ」が問題化するたびに見直されてきた。

 それでも「抜け道」は残り、問題は後を絶たない。国民の目が行き届く抜本的な改革が必要だ。

 2月には、自民党茂木敏充幹事長らの政治団体が、後援会組織に巨額の資金を移していた問題が明らかになった。

 この政治団体は、規正法の改正で2009年に運用が始まった「国会議員関係政治団体」で、人件費を除く1万円超の支出の使途公開が義務付けられた。

 しかし、資金を移していた後援会組織は公開基準が緩く、支出の大半は使途が詳しく分からない。透明性を高めるはずのルールが骨抜きになっていた。

 特別委の論点となる政策活動費も規正法が根拠だ。自民党では幹部に億単位で支給されるが、使途の公開義務はない。

 抜け道をふさぐには、政治資金の性質や金額で線引きせず、入りと出を全て公開すればいい。