長谷川岳議員「おれに恥をかかせるのか」…繰り返された威圧的言動、「副作用大きい」との指摘も(2024年5月1日『読売新聞』)

 北海道や札幌市職員に対する威圧的な言動が表面化した自民党長谷川岳参院議員(53)。国からの情報や支援を引き出したい自治体の要望を受け、パイプ役として成果を上げる一方、その手法や行きすぎた態度が批判を招いた。背景には自治体が長谷川氏に依存する中で、担当職員らが負担を強いられるいびつな構図がある。
キャプチャ
報道陣の取材に応じる長谷川参院議員(4月6日、札幌市中央区で)
一度や二度ではない高圧的言動
 「おれに恥をかかせるのか」「覚悟を持て」
 ある職員は会議後、長谷川氏がいる部屋に一人呼び込まれ、そう言われた。入室前にはカバンを持ち込まないよう指示された。別の職員は会議に提出した資料の不備を指摘され、「やる気がないなら帰れ」と突き放された。道や市の関係者によると、こうした光景は一度や二度ではない。
 愛知県出身の長谷川氏は、北海道大在学中に「YOSAKOIソーラン祭り」を企画し、広く知られる存在となった。2010年の参院選で初当選し、総務副大臣などを務めた。自治体関係者によると、職員に対する威圧的な言動は19年の知事選で、自身が推した鈴木直道知事が初当選してから目立つようになった。
国への要望スムーズに
 威圧的な言動が問題視されたのは、3月の週刊誌報道がきっかけだった。同じ職員が年間20回以上も長谷川氏に会うため、出張を繰り返していたことなどが判明した。道職員は「上級幹部も叱責(しっせき)されていて、我慢するしかない状況だった」と打ち明ける。
 ただ、長谷川氏によってもたらされた成果も少なくない。札幌市の念願だった札幌丘珠空港札幌市東区)の滑走路延伸を国土交通省防衛省に要望する際、長谷川氏が間に立つことで、各省の幹部が協議の相手になったという。市関係者は「市だけでは国との協議はここまでスムーズに進まなかった。長谷川氏なしでは30年までに延伸を実現する計画はかなわなかっただろう」と話す。
 4月20日に札幌市で開かれた国政報告会には、秋元克広市長や函館市の大泉潤市長ら100人以上の首長が出席。長谷川氏は知床観光船沈没事故を受けて、知床半島周辺の携帯電話の通信エリア拡大に尽力したことや、中国による水産物の全面禁輸で苦しむホタテ漁業者への対応などを強調した。
政策実現へ、大きい副作用
 道や市の長谷川氏に対する過度な対応は、頼りがいのある国会議員が少ない実情も浮き彫りにした。
 複数の自治体職員は「国会議員に要望や陳情をしても『はい、わかりました』で終わることが多いが、長谷川氏は違う」と口をそろえる。自治体には政策実現に向けた資料を作らせ、勉強会を繰り返すなどして厳しくチェック。その上で省庁の職員に要求する。
 札幌市幹部は「コーディネーター兼プレーヤー」と表現し、道幹部は「(政策を実現するための)『特効薬』として効き目は抜群だが、副作用も大きい」と解説する。