若い女性の「やせていてもメタボ」に警鐘 不妊や骨粗鬆症、糖尿病のリスクも みんなで考える 思いやりのカタチ(2024年5月1日『産経新聞』)

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若い女性のボディーイメージに対する意識
 
日本の20代女性の5人に1人が「やせ」の状態にあるという。「やせ」の中に、「やせメタボ」と呼ばれるような糖尿病のリスクになりうる人がいることが最近の研究で分かってきた。情報発信を強化しようと今年3月、産官学が連携した「マイウェルボディ協議会」が発足。「自分らしく、心地よくあり続けられる健康な体『ウェルボディ』を自らの意志で選択できる社会」を目指している。
■大きな社会問題と認識されず
そもそも、「やせ」とはどういう状態を指すのか。日本肥満学会は、体重と身長から算出する体格指数「BMI」を使って定義する。BMI18・5未満が「低体重(やせ)」に該当。18・5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」だ。
協議会の代表幹事で順天堂大国際教養学部の田村好史教授(代謝内分泌内科学)によると、日本ではこれまで、10~20代の若年女性の「やせ」が大きな社会課題だと認識されてこなかった。
ところが、「女性の人生を長い目で見たとき、ライフステージごとに表れるさまざまな健康課題をひもとくと、若い時期の『やせ』が遠因になっていることが分かってきた」と話す。
■女性ホルモンが低下し月経異常も
「やせ」がもたらす代表的な影響が月経異常だ。「やせ」は、生殖をはじめ心身の機能を支える女性ホルモン「エストロゲン」分泌量の低下を招き、無月経を引き起こし、生殖しにくい状態を生じさせる。
妊娠・出産にも影響が及ぶケースがある。近年増えている2500グラム未満の低出生体重児は、母親の「やせ」がリスク要因となっている。
また、女性の骨量のピークは20歳ごろといわれており、この時期に骨量の維持や増加に関わるエストロゲンが不足すれば、将来の骨粗鬆(こつそしょう)症につながりやすい。
さらに注意したいのが、糖尿病のリスク上昇だ。一般的には肥満によりリスクが上がるとされているが、糖尿病の専門医でもある田村教授は「やせているのに、血糖を下げるホルモン『インスリン』の効きが悪くなり、食後に高血糖となる『耐糖能異常』となっている若い女性が多くいることが研究結果で分かってきた」と説明する。
若いやせた女性には、食べる量が少ない▽運動量が少ない▽筋肉量が少ない-という健康的とはいえない状態の人が多い傾向があるという。こうした点が、太った人と同様に糖尿病のリスクを高めている可能性があるといい、「やせメタボ」と呼んでいるそうだ。
■食べて運動する健康的な循環を
多様なリスクがある一方で、日本の若い女性のやせることへの関心は根強い。
協議会が全国の16~23歳の女性1千人を対象に行った調査によると、BMI25未満の「普通体重」「低体重(やせ)」に該当する人のうち、やせたい願望のある人(740人)の過半数が、普通体重以下なのに自分自身を「太っている」と認識していた。
「『やせていることがいい』とするイメージによって、食べない、運動しないという不健康な行動をとると、さまざまな健康リスクにつながることをまずは知ってもらいたい」と訴える田村教授。
改善の鍵は「しっかり食べて、運動する」という健康に結びつくエネルギーの循環だ。「例えば、運動が苦手な人でも楽しめるレクリエーションのような運動活動の取り組みがあれば、生涯スポーツとして続けられるようになり、この課題解決の一助となるのではないか」と話している。(篠原那美)