離婚後も父母双方が親権を持つ共同親権の導入を柱とした民法などの改正案がきょうにも衆院を通過し、参院に送られる見通しだ。
共同親権を巡っては父母が協力し養育に関われると支持する声がある一方、家庭内暴力や虐待が続くことへの不安も根強い。
立憲民主党は、父母双方の合意がなければ共同親権を認めないと条文に明記することなどを求めた。父母の力関係で共同親権が強いられるのを防ぐ狙いがあった。
だが4与野党の修正合意は、共同親権の選択が双方の「真意」に基づくかを確認する措置の検討を付則に加えるにとどまった。子の意思を尊重する規定は見送った。
これで子を含む当事者の安全安心が保障されたと言えるだろうか。参院では子の利益を第一にさらに議論を詰めてもらいたい。
現行法は、離婚後は父母の一方だけが親権を持つ単独親権を定めている。このため親権のない親から、子の養育に関われないことへの批判が上がっていた。
親権は子の世話や教育などを行う親の権限であり義務でもある。
離婚後も父母の間に一定の信頼関係が保たれ、共に愛情を持って子の養育に携われば子どものためにもなるだろう。
ただ、暴力や虐待の被害者らは、加害者側による理不尽な支配が続くことを強く懸念している。
「真意」をどのような措置で確認するかは、政府が施行日までに検討するという。
重要な論点であり、先送りしてはならない。政府は父母の気持ちを見極める具体策を示し、参院で議論を尽くす必要がある。
改正案では父母が合意した場合に共同親権を選べる。合意できない場合は家庭裁判所が親権者を判断する。暴力や虐待などで「子の利益」が害されると認められる場合は単独親権とする。
見過ごしてならないのは、家裁の役割が大きく増すにもかかわらず、その体制がどう強化されるのかが明確になっていない点だ。
政府は、共同親権下では進学先の選択といった重要な決定は父母双方の合意が必要になるとしている。合意がなければ家裁に判断を求めることになる。持ち込まれる案件が増える可能性が高い。
父母が対立を深めた場合の対応も検討課題になる。
家裁は今も人員不足が指摘されている。さまざまな家庭の事情に応じた適切な判断をどう下していくのか。最高裁はその道筋を早急に示すべきだろう。