宿泊税は産業廃棄物税や核燃料税などと同じく、自治体が独自課税する法定外税。2002年の東京都を手始めに大阪府や京都、金沢、福岡市など3都府県、6市町が導入済みだ。宿泊施設が1泊100~千円を徴収して、自治体に納める。目的税であり、税収は観光振興などの施策に使われる。
常滑市は日本六古窯(こよう)に数えられる「常滑焼」の産地だが、先行する9自治体のような大都市や大観光地とは言い難い。愛知県内では名古屋市に次ぐ規模という4千超の客室は、7割が空港島に集中している=写真。税収は年2億円を見込み、空港と市街地を結ぶシャトルバスの運行やクーポン券の発行に充てるという。空港客を安易に狙い撃ちした税制と受け止められることがないよう、宿泊客らへの丁寧な説明と、満足度を高める施策が求められる。常滑焼や山車、酒造文化など地元の観光資源にはいっそう磨きをかけたい。
他にも、北海道ニセコ町や静岡県熱海市が宿泊税の導入を決め、千葉県、三重県鳥羽市、岐阜県高山市なども前向きだ。長野県では県に加え、白馬村や阿智村も独自に検討するが、徴収の手間や客離れを懸念して一部で反対も根強い。県との二重課税や、温泉地では既存の入湯税にプラスとなる負担感を危惧する声もある。
どの自治体も財政難で、法定外税に目が向くのはうなずける。地域課題を地域で解決する地方自治の趣旨にも合う。例えば和歌山県高野町は世界遺産・高野山へのオーバーツーリズム対策として「入山税」を徴収、トイレの管理費などに充てる検討を始めた。ただ、税の必要性や使い道を十分に議論し、点検すべきなのは言うまでもない。客、事業者、住民のいずれもが納得できる税制としたい。