親子のあり方の根幹に関わる。子どもの利益が損なわれないよう、運用しなければならない。
離婚後も父母が共同で親権を持つことを可能にする改正民法が成立した。公布から2年以内に施行される。
両親が離婚後も子どもの養育に関わり、責任を果たすようにすることが導入の目的だ。しかし、現状では懸念が拭えない。
父母の話し合いでは、お互いの力関係から、一方が無理強いされて共同親権に合意するというケースが起こりかねない。
どちらかが反対しているのに、家裁の判断で共同親権になることもある。その結果、子どもに不利益が及ぶことが危惧される。
とりわけ心配されるのが、配偶者からの暴力(DV)や子どもへの虐待がある場合だ。親権の行使を理由に接点が生まれ、被害が続く可能性がある。
改正法では、DVや虐待の恐れがあれば、家裁は共同親権を選択してはならないと定められた。ただ、被害を客観的に証明するのは容易でない。
子どもやDV被害者を危険にさらしてはならない。慎重な対応が求められる。
当事者の事情を的確に把握し、公正に判断する家裁の役割は重要だ。体制の拡充が不可欠である。
親権の選択に当たって、子どもの意見を聞く規定は盛り込まれなかった。意思を尊重するための手立てを講じるべきだ。
共同親権となった際、子どもの養育で、どのような場合に父母の合意が必要か、線引きが難しい。
法務省は国会で、日常生活に関することは、同居親が一人で決められると答弁した。一方、進学先の選択や転居、命に関わる医療行為などは、父母で決めるべきだとの解釈を示した。
ガイドラインで分かりやすく明示する必要がある。
親権は、子どもの幸せを最優先に行使されなければならない。改正法の付則には、施行後5年で制度を見直す規定があるが、問題が生じれば速やかに対応すべきだ。