岸田首相襲撃1年 「警戒の空白」埋まったか(2024年4月16日『産経新聞』-「主張」)

岸田首相襲撃1年 「警戒の空白」埋まったか(2024年4月16日『産経新聞』-「主張」)

岸田首相の襲撃現場で、取り押さえられた容疑者(中央下)=令和5年4月15日、和歌山市雑賀崎漁港

 元首相、現職首相への襲撃をいずれも防げなかった警察の要人警護は立て直されたか。和歌山市の選挙演説会場で岸田文雄首相に爆発物が投げられた事件から1年が経(た)った。

 警察庁は要人警護の運用を根本から見直してきた。16日には衆院3補選が告示される。聴衆が集まる場の安全をどう確保し、テロを防ぐか。「重すぎた教訓」を生かさなければいけない。

 岸田首相襲撃は、安倍晋三元首相の衝撃的な射殺事件から僅か9カ月後に起きた。防げなかった警察にかつてない不信と不満が突き付けられ、日本の民主主義の根幹が揺らいだ。

 警察が進めてきた要人警護見直しの柱は3つある。1つは演説会場の安全確保の徹底だ。会場は屋内を優先に選び、出入りを管理する。来場者の手荷物検査、金属探知を実施する。握手など接触行動を控える。警護対象側の歩み寄りは不可欠だ。

 陣営が会場周辺を下見し、危険区域を警察と打ち合わせ、襲撃犯が潜める隙間を潰す詳細計画にする。この警護計画案を警察庁が事前審査し、必要な修正を加える。

 安倍氏殺害後の令和4年8月から二重三重に警護計画がチェックされるよう運用が変わり、今年3月までに警察庁は約5600件を審査、約4300件で修正を指示した。

 2つ目は最新テクノロジーの利用だ。演説会場などの上空にドローンを飛ばし、搭載カメラの映像から、群衆の異常行動を人工知能(AI)に検知させる。地上では防犯カメラ動画をAIで解析し、目視確認を補助する。効果測定を蓄積し、有用性を上げていきたい。

 3つ目は、動向を把握しにくいローンオフェンダー(単独テロ犯)対策だ。ネットでの不穏行動者の情報収集を行い、危険が予測される人物情報を集約する取り組みを一部試行中だ。

 これらの施策は、3補選でも順次取り入れられていくとみられる。結果に慢心は厳禁で、「警戒の空白」の有無を必死に探し、不断の見直しを重ねる必要がある。二度とあのようなテロを許してはならない。

 自民党派閥による政治資金の裏金化問題について、国民の嫌悪感や怒りは根強い。警護環境は厳しい状況にあると認識すべきだ。テロが起きにくい状況にあるわけではない。