◆2019年から国が各自治体に配分
国は森林環境税の導入に先立ち、2019年度から、各自治体へ森林整備資金の配分を始めた。本紙は関東の7都県と県庁所在地、東京23区など政令市を含む計38自治体を対象に、決算が終了した22年度までの使用状況を調べた。
自治体の公式サイトや担当者への取材によると、国から38自治体に配分されたのは4年間で計約94億9900万円。このうち基金などに蓄えず、各自治体が実際に事業費として支出したのは68.8%にあたる65億4000万円だった。
◆「積み立てているだけ」3億5868万円
東京都や川崎市など14自治体では資金の使用率が100%だったのに対して、さいたま市や東京の板橋区、豊島区など10自治体は半分も使っていなかった。4年間の支出額がゼロだった東京の3区は全額を基金に積んでおり、その額は計3億5868万円に上る。本紙の取材に、大田区の担当者は「充当事業を含め検討中のため、今は積み立て続けるだけになってしまっている」と答えた。
◆「使われてないから減らすというのは難しい」
資金の使途は、森林環境税などに関する法律で、森林整備や木材利用の促進などに充てるよう定められている。総務省市町村税課の担当者は「法の範囲内で地域の実情に応じて活用いただいている。基金への積み立ても自治体の判断だ」と説明。使用率に応じた資金の配分などを見直すことについては「使われていないから減らすというのは難しい」と話した。
森林環境税 2024年度から始まる目的税。住民税に上乗せする形で、原則1人当たり年間1000円が徴収される。税収は約600億円となる見通し。徴収後は各地方公共団体に森林整備等の財源として配られる。新税導入に先立ち、国は19年度から「森林環境譲与税」として資金の配分を開始。原資には、都道府県と市町村の全自治体による地方共同法人「地方公共団体金融機構」が金利上昇に備えて用意していた準備金を活用していた。資金の配分基準は、私有林人工林の面積▽林業就業人口▽人口の3項目で、都市部ほど譲与額が増える傾向にある。
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◆森がない…「使途が限定されてしまう」
国から配られた森林整備の資金について、東京の大田、渋谷、台東の3区は全額を基金に積んでいた。また、新宿区は、森林関連の事業に使い切ることができず余ったお金を翌年度の一般財源に繰り越した。
基金に積んだ資金の使い道について、渋谷区と台東区の担当者は「23年度以降の事業に充てる予定だ」と説明する。資金を眠らせたままだったこの2区と大田区以外の担当者からも、「自らの区域に森林がなく使途も限定されてしまう」という声が聞かれ、都市部の自治体が頭を悩ませる実情が浮かぶ。
基金に積んだ資金の使い道について、渋谷区と台東区の担当者は「23年度以降の事業に充てる予定だ」と説明する。資金を眠らせたままだったこの2区と大田区以外の担当者からも、「自らの区域に森林がなく使途も限定されてしまう」という声が聞かれ、都市部の自治体が頭を悩ませる実情が浮かぶ。
◆繰り越し後、別の事業に使われた疑いも
余った資金の使い道が一部不明瞭になった事例もある。新宿区では21、22年度に計約340万円の資金が余ったため、いずれも翌年度に繰り越した。この際、ほかの予算の繰越金とともに一般財源としたため、別分野の事業に支出された可能性もある。国からの資金は森林整備などに限定しているが、新宿区の担当者は「実態としてはそうなっていない」と話した。
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◆「間接的に森林整備」している自治体も
東京都によると、森林のない東京都23区では、資金を木材購入費などに充てることで、間接的な森林整備を試みる自治体も少なくない。
一定の面積に対して樹木や草地で覆われた面積を示す「緑被率」がともに10.7%で23区中20位と、緑の少ない中央区と墨田区は、いずれも4年間で資金を100%使い切った。中央区は、東京都檜原村と森林保全整備に関する協定を締結。資金の多くを、同村で実施する森林保全活動費に充てた。墨田区は、公共施設や学校の新改築時に木材を使用する取り組みを行っている。
◆他県自治体と協定、建築物に木材活用
港区(緑被率22.62%)では2011年秋に「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」を施行。延べ床面積5000平方メートル以上の建物を区内に建てる場合、同区と協定を結んだ自治体産の木材などを活用するよう建築主に求めている。同区で木材が消費されると、協定先の自治体で植林や間伐などの森林更新が進む仕組みだ。
協定先は北海道紋別市、宮城県石巻市、宮崎県延岡市など全国に80超。港区内で、これまでに協定木材が使われた建物は300近くに上る。担当者は「協定自治体との連携の輪が広がり、区内での木材活用を積極的に進めることで全国の森林整備につながっている」と話した。
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