少子化対策をめぐる岸田首相の「不誠実な数字発言」 異次元の対策には身を切る覚悟を(2024年4月12日『サンケイスポーツ』-「甘口辛口」)

■4月12日 岸田文雄首相はバイデン米大統領から国賓待遇で招待され、さぞ、ご満悦だろう。しかし、留守中の国内では、不誠実な数字発言が批判を浴びている。少子化対策の財源確保をめぐる国民負担の金額である。首相は当初、1人毎月500円弱としていたが、かなり違ったからだ。

 財源は公的医療保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金」で、管轄のこども家庭庁が年収別徴収額の試算を発表した。2026年度からの徴収で年々増額する形。雇用されている会社員が入る被用者保険で見ると、28年度に年収400万円の人は給与から月650円、年収600万円なら月1000円、天引きされる。

 ちなみに、同時期の自営業者などは年収400万円の人は月550円、600万円の人は月800円という。1人当たりだから、共働きの子育て夫婦にも大きな負担となる。首相は2月の国会で平均負担月額を28年度は500円弱と答弁。3月に公表した試算では、精査の結果、450円になるとしていた。どこが精査なものか。

 日常の買い物をすれば、食品をはじめ生活必需品の物価高は相変わらず。しかも、40歳から誰もが一生払い続ける介護保険料のうち、65歳以上の分が今月、3年ぶりに改定された。その金額は全国主要74自治体の半数近くが、月額6500円以上に。高齢者の生活も年々厳しくなり、協力したくても限界がある。

 異次元の対策はどこへ行った。いっそ、国会議員の定数713人の大幅削減や1人あたり月100万円の収入となる旧文通費の廃止など、思い切った行財政改革をしてはどうか。かなりの財源を見込めるし、内閣支持率も上がるはずだ。首相が身を切る覚悟を見たい。(森岡真一郎)