マイナンバー反対の理由は「人間を牛化する」…河村たかし・名古屋市長の懸念 政府は5月に利用拡大(2024年4月11日『東京新聞』)

 
 政府は、国家資格の事務手続きや自動車変更登録などにマイナンバーを利用できる関連法を5月27日に施行する。保険証廃止も含めたマイナンバーの利用拡大には、個人情報保護の観点などで自治体からも懸念が出ている。マイナ制度に反対していることで知られる名古屋市河村たかし市長に、その理由や利用拡大への考えを聞いた。(聞き手・高田みのり)
マイナンバーやマイナカードを巡り、インタビューに応じる河村市長

マイナンバーやマイナカードを巡り、インタビューに応じる河村市長

 —なぜマイナンバー制度に反対なのか。
 「全体主義というか、そういう思想だから。牛(の個体識別番号)は10桁、人は12桁。人間を牛化するわけです」

◆管理に服従する人間をつくる…民主主義と逆行する

 ―市長が考える制度のリスクとは。
 「リスクとして一番でかいのは、管理に服従する人間をつくってしまうこと。民主主義というのは民が主ですから、それに逆行する。カードの利権化も問題。同じように納税していても、カードをつくれば最大2万円分のポイントをくれるというのもどうなのか」
 —マイナの利点をどう考えるか。
 「にゃあ(ない)と思いますよ。時々、免許証を持っていない人が『身分を証明するものが欲しい』と言いますわね。でもまぁそれも、別に」

◆「保険証とマイナカードを二つ持てばいい」

 —政府は今年12月にも紙の保険証を廃止し、マイナカードと一体化させるが。
 「国は『マイナカードがあればどこかで倒れても持病や薬が分かって便利』と言うけど、ならカードを常時携帯してなきゃいかん。紙でいいんですよ、今の保険証で。(保険証とマイナカードを)二つ持っとりゃええじゃないですか」
 ―マイナカードを活用した証明書類のコンビニ交付について、名古屋市は長年「市長の強い意向」により政令市で唯一導入していなかった。ほかの自治体に比べてサービスが低いとの批判もある。
 「コンビニ交付は初期投資の1~2億円のほか、維持管理費もかかる。そのお金があれば他のサービスに使えますし。(市民の便利さより)もっと大きなものを守ろうとしてるということですわ」
マイナンバーカードの表面(見本)

マイナンバーカードの表面(見本)

名古屋市も証明書類のコンビニ交付導入へ

 ―その名古屋市も26年度のコンビニ交付導入を見据えて24年度予算に約500万円を盛り込んだ。かじを切ったのはなぜか
 「僕はカードを持たんでもコンビニ交付できる仕組みを国はやらんと思っとったの。でも(マイナカード機能を搭載したスマホでの交付が可能に)なった。だで(なので)、不本意だけど名古屋もそうしようかと」
 ―マイナ制度の活用に肯定的になったわけではない。
 「いやいや全然反対ですよ。今は役人にとって都合がええだけ。ああいうの(マイナ制度、マイナカード)は早くやめた方がいい」

 改正マイナンバー法と関連法 国がデジタル社会の基盤整備のため、マイナンバーの利用範囲を拡大する法律。これまで社会保障、税、災害対策の3分野に限定していたマイナンバーの利用を、国家資格の事務手続きや自動車変更登録などにも広げる。在外公館でのマイナンバーカード交付申請や受け取りも可能となる。また、本人が不同意と回答しない限り、年金受給者の口座情報などが日本年金機構から国に提供され、公金受取口座として登録されるように運用する。