戸惑う4月(2024年4月10日『高知新聞』-「小社会」)

 春らんまんの季節ながら、きのうの朝は荒れた天候に多少戸惑った。高知市で散歩をしていると、真っすぐ歩けないような突風、逆風。川辺の桜もかなり花を散らしたようだ。

 お天気博士の故倉嶋厚さんは、ドイツには〈4月よ、4月はいったい自分でどうしたらよいのか分からないでいるのだ〉という童謡があると書く(「季節の366日話題事典」)。寒い国の4月はまだ花の季節ではない。雪解けの泥が乾くと、寒の戻りの北風とともに土ぼこりが顔に当たる。季節が自分でも戸惑っているということか。
 
 新年度が始まって10日目。入学あるいは浪人、就職に転勤と環境が変わった人は戸惑うことなく、新しい居場所に慣れただろうか。

 東京商工会議所の昨年の調査では、新入社員の97%が社会人生活に何らかの不安を感じているという。理由の上位は「仕事と私生活のバランス」「上司・先輩・同僚とうまくやれるか」「仕事が自分に合っているか」。小欄の三十数年前を思い返しても、さもありなん。

 企業側も悩み多き時代だろう。就職先の会社でいつまで働きたいかという問いに、「定年まで」は24%余り。10年前よりも15ポイント近く落ちた。人手不足の売り手市場。魅力ある職場環境づくりはますます欠かせぬ努力になる。

 きのう、職場にハラスメント防止の小冊子が配られた。平成初期に入社したおじさんも気をつけなければ。4月の戸惑いを増やさぬように。

職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)