配属ガチャ(2024年4月10日『熊本日日新聞』-「新生面」)

 満開の桜に祝福されて入社式に臨んだ新入社員の皆さん、研修を終えて、それぞれの部署に配属される頃でしょうか。今の関心事は「配属ガチャ」ではありませんか。希望通りの部署に行けるかどうか、カプセル玩具と同様に開けてみなければ分かりません。結果によって、退職を考える人も少なくないとか

▼想像していた仕事内容と実態が懸け離れていた、譲れない勤務地がある-。売り手市場でもあり、転職のハードルも低い。とはいえ、迎えたばかりの仲間に去られる現場にとっては痛手だ。職種ごとに細分化して採用する、配属先を事前に伝えるなどの対策を取る企業もある

▼新入社員の傾向を分析している産労総合研究所によると、今年の新人は「新NISAタイプ」だそう。自分の未来は自分で築くべく、目標をはっきり見定めて、熱意を持って効率的に正解に向かっていくという

▼早くスキルを身に付けたい人に、回り道は敬遠されるだろう。でも早計に道を決めすぎるのも、何だかもったいない。自分では気付いていない才能が芽を出す可能性もあるかもしれない

▼ままならないことばかりの人生、大の阪神ファンとして知られた経済評論家、故・國定浩一さんは「2勝3敗の哲学」を提唱した。阪神が4年連続最下位を喫しても「5試合やって2回も勝っとるやないか」と笑い飛ばした

▼人生という長いシーズン、未来を信じて進めばチャンスはきっと来る。試合は始まったばかりだ。離れる人も、踏みとどまる人も、前を向いて行こう。