何もしないのは暴力の容認 「行動する第三者」になろう 「アクティブ・バイスタンダー」加害をやめさせるノウハウとは(2024年3月17日)

 
 ハラスメントや性暴力などの現場に居合わせた第三者が、加害者の行為を妨げる「アクティブ・バイスタンダー」が注目されている。とっさに行動するための知識や技術を広める団体の講座は2021年以降で計約30回を数え、参加者は延べ約350人に。見て見ぬふりで済まさないために必要なノウハウが徐々に広まっている。(奥野斐)

 アクティブ・バイスタンダー 救急現場に居合わせ、応急処置や心肺蘇生などの救助に携わる人を指す「バイスタンダー」が医療分野で知られ、ハラスメントや差別、性暴力などの場面でも使われるようになった。「行動する傍観者」とも訳される。差別の抑止力として注目され、米国の学校などでは講習を実施している例も少なくない。

◆会議で同僚がハラスメントを受けていたら

 道端で絡まれている人がいる、会議で同僚がハラスメントを受けている…。こうした場面で適切に声をかけるなどし、被害の防止や最小化をするのがアクティブ・バイスタンダーだ。
 一般社団法人ジェンダー総合研究所(東京)は、行動を起こすための知識や実践を共有しようと月1回ほどオンライン研修を開催。参加者はグループに分かれ、白杖(はくじょう)を使う人が道端で体当たりされて転倒した場面や、職場の会議などを想定し、どのタイミングで、どう介入するかを議論する。参加者のうち女性が9割ほどを占め、行政や教育、医療関係者が多いという。

◆実際には意外と動けないもの

 共同代表の浜田真里さんは「例えば、AED自動体外式除細動器)の使い方を知らないと緊急時に対応できないように、実際には意外と動けないもの。行動を起こす瞬発力をつけるには訓練が必要」と話す。
 
ジェンダー総合研究所共同代表の浜田真里さん(本人提供)

ジェンダー総合研究所共同代表の浜田真里さん(本人提供)

 ジェンダー総合研究所が考案したキーワードは「たよレます」だ。助けを呼ぶ、寄り添う、レコーディング(記録)する、間違いを指摘する、すり替える―の頭文字で、身の安全を確保した上で、被害を止めるために具体的な行動を取ることが重要という。
 「大丈夫ですか」と声をかける、証拠を残す目的で写真や動画を撮影する。「それはハラスメントです」と簡潔に伝えることや、場の話題や空気を「すり替える」ことも有効だ。

◆「人助け指数」日本は下から4番目

 行政が周知に乗り出す例も出てきた。佐賀県では22年に啓発用パネルを作成、展示や自治体向けに貸し出すなどしている。
<div claslefleft"="" style="background-repeat: no-repeat; box-sizing: inherit; padding: 0px; margin: 0px;">
 
オンライン研修で説明する浜田真里さん(ジェンダー総合研究所提供)

オンライン研修で説明する浜田真里さん(ジェンダー総合研究所提供)

 英国の慈善団体「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が人助けや寄付、ボランティアをしたか調査し、発表する「世界人助け指数」で、日本は142の国・地域中139位(23年)。中でも「見知らぬ人を助ける」の項目は、世界最下位だった。

◆差別を認識するのにも知識が必要

 浜田さんは「何もしないのは差別や暴力の容認につながる。動くには勇気がいるが、方法を学び『自分にも何かできそうと思えた』という人は9割を超す」と話す。差別的な言動を「差別だ」と認識するのにも知識が必要といい、「(差別を受けた側に)『気にしすぎ』と言うのは、マジョリティー(多数派)の特権です」と指摘した。
 講座は参加費4000円で、次回は24日。詳細はジェンダー総合研究所のホームページに掲載している。