国会の党首討論 大局的見地から力を競え(2024年4月9日『産経新聞』-「主張」)

 
党首討論での発言する自民党安倍晋三総裁(左)。右は野田佳彦首相=平成24年11月、国会・衆院第1委員室

 与野党国対委員長が、今国会中に党首討論を開くことで合意した。岸田文雄政権下では一度も行われておらず、開催されれば令和3年6月以来、約3年ぶりとなる。

 日本が直面している課題は、自民党の派閥パーティー収入不記載事件を受けた「政治とカネ」の問題だけではない。憲法改正や安定的な皇位継承策、厳しい安全保障環境を背景にした防衛力の抜本的な強化策など喫緊の課題は山積している。

 党首が大局的な見地に立って国家観や政策の方向性などについて議論を交わすことは重要だ。国民がリーダーの資質を見極める場としても有意義である。今国会で確実に実施し、力を競い合ってもらいたい。

 党首討論は平成12年に英国議会の「クエスチョンタイム(QT)」を参考に正式導入された。首相が質問に答えるだけでなく、野党党首に逆質問したり反論したりすることができるのが特徴である。

 導入当初の12年は8回開催されたが、回数は減少傾向にあり、29年は初めて一回も開かれなかった。令和3年6月に当時の菅義偉首相と立憲民主党枝野幸男代表らが行ったのを最後に開かれていない。

 開催が低調な要因の一つに、野党側が予算委員会の開催を重視しているということがある。予算委のほうが首相を長時間拘束でき、一方的に質問できるからだ。これに対し、党首討論は1回45分で、複数の野党党首が時間を分け合うため、野党党首の持ち時間が短い。自民も首相の失点を避けるため開催に必ずしも積極的ではなかった。

 与野党は首相の国会出席の負担を減らすため、首相が衆参の本会議や予算委などに出席する週には開催しないという申し合わせをしている。このことも開催頻度を低下させる要因となっている。1回の時間をより長くし、定期的に開催するなどの見直しも検討すべきである。

 旧民主党政権時の平成24年11月に行った党首討論では、当時の野田佳彦首相が自民の安倍晋三総裁に突如、衆院解散を表明し、会場がどよめく場面があった。野田氏は令和4年10月に行った安倍氏への追悼演説で「火花散るような真剣勝負」だったと回顧した。このときのような、党首の威信をかけた緊張感のある論戦をしてほしい。