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 老後の生活をより充実させるために、公的年金を補完する私的年金の制度を拡充することは、有力な選択肢の一つといえる。そのための環境整備を急ぐべきである。

 年金制度を巡っては社会保障制度の支え手である現役世代の減少で、国民年金や厚生年金などの公的年金の水準は今後、抑制される見通しだ。

 一方で公的年金に上乗せする企業年金個人年金といった私的年金は広がりを欠いている。これをいかに打開するかが問われている。

 厚生労働省の専門部会が、企業年金個人年金の制度改正に関する「議論の中間整理」を公表した。

 中間整理は、個人年金として知られる個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」について、掛け金を出すことができる期間を、現状の65歳未満から70歳未満に引き上げる方針を確認した。掛け金の上限額を上げる案なども提示している。

 65歳を超えても働く人は増えており、掛け金を長く出せるようになれば老後の生活設計はしやすくなる。

 政府は制度の詳細を詰めた上で、令和7年の通常国会への関連法案提出を目指している。現在検討を進めている見直しを、私的年金のさらなる普及につなげたい。

 イデコには税制優遇がある。個々人の働き方や企業年金の有無にかかわらず、税制優遇の恩恵を同じように受けられるようにすることが求められよう。加入手続きは煩雑で、原則60歳まで掛け金を引き出せないなどの制約もある。使いやすい制度にしてほしい。認知度の向上に努めることも欠かせない。

 私的年金のうち企業年金についても、中間整理は必要性を強調している。

 企業年金は近年、縮小傾向にあり、給付水準の低下や、適用される従業員数の減少傾向が指摘される。厳しい経営状況で余力がない事業所もあるとみられるが、企業には社会的責任がある。企業年金を充実させることも期待される。

 公的年金について、持続可能性を追求すべきはもちろんである。私的年金については、加入者の裾野を広げ、希望する人が選択できる年金制度のメニューの一つとして定着させる必要がある。