初の首相出席の政倫審に既視感 野田佳彦元首相「悲しい気持ち」(2024年2月29日『産経新聞』)

 
衆院政治倫理審査会で、立憲民主党野田佳彦元首相(右)の質問を聞く岸田文雄首相=29日午後、国会内(代表撮影)

29日の衆院政治倫理審査会(政倫審)に自民党総裁として出席した岸田文雄首相は、派閥のパーティー収入不記載事件を受けた政治改革への決意を述べた。ただ、安倍派(清和政策研究会)と二階派志帥会)の5人に全面公開での出席を迫る狙いで自ら出たため、実態解明や政治改革で新たな説明を用意していたわけではなかった。衆院予算委員会と似た質疑が多くなり既視感があった。

初めて現職首相が出席した政倫審の会場は、独特の緊張感に包まれた。普段の国会で定番のやじは飛ばず、議員らが集中して質疑に耳を傾ける様子が見て取れた。ただ、首相の答弁はほぼ従来通りだった。

「マスコミオープンで説明責任を果たす。これも前例にとらわれないという私の決意だ」。首相は冒頭にこう強調した。

立憲民主党野田佳彦元首相は、開催を巡る与野党協議の行き詰まりを打開しようと首相が出席したことに「強烈な違和感を覚える。悲しい気持ちだ」と疑問を呈した。

野田氏は首相と対峙(たいじ)した26日の予算委に続き、首相が就任後も自身の政治資金パーティーを「勉強会」と称して続けていると批判した。首相は「国民の疑念を招くものには当たらない」などと説明し、野田氏は「まったく予算委と同じ答弁だ」と返した。

日本維新の会共産党は、安倍派がパーティー収入を還流させてきた経緯などを質問したが、首相は「経緯については十分に確認できなかった」などと述べた。

政倫審は、疑惑を持たれた国会議員に弁明の機会を与える場だ。首相は予算委で長時間答弁してきており、首相周辺は前日夜、「新しい情報はないと思う」と語った。それでも首相が出席すれば「『何も新しいことがなかった』と批判される」(自民幹部)という逆効果の懸念があった。

立民幹部の一人は、首相が自身のパーティーについて野田氏に再三迫られた末、「在任中はやることはない」と答弁したことが唯一の成果だと語り、「本番は明日だよ」と強調した。(田中一世)

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