自民党派閥の裏金事件を受けた国会の政治倫理審査会(政倫審)の開催を巡り、岸田文雄首相(党総裁)は26日も指導力を発揮できなかった。自民は改めて「完全非公開」を主張し、公開を求める野党との溝は埋まらなかった。再発防止に向けた政治資金規正法の改正でも自民内の議論は停滞する。確定申告の時期を迎えて納税者の不信感が高まる中、政府・自民の動きは鈍い。
◇「首相が改革の障害」
「リーダーシップがない、やる気がない、と思わざるを得ない」。26日の衆院予算委員会で質問に立った立憲民主党の野田佳彦元首相は、「政治とカネ」に対する首相の姿勢を徹底批判した。
衆院政倫審については先週末までの与野党協議で、自民は出席議員を安倍、二階両派の事務総長経験者ら5人に絞った上で、国会議員と報道関係者の傍聴を認めない完全非公開とする方針を伝達。野党と対立が続いていた。
野田氏は首相に対し、自民に公開を指示するよう再三迫った。首相は「完全な非公開は(過去9回で)1件しかない」と含みを持たせたものの、それ以上は踏み込まなかった。一方、自民はこの日の衆院政倫審幹事会で改めて完全非公開での開催を求め、ちぐはぐさを印象付けた。
野田氏は、派閥からキックバック(還流)を受けていた自民議員について、「過去5年分を修正申告し、納税義務を果たすよう指示すべきだ」とも訴えたが、首相はゼロ回答を繰り返した。野田氏は、自民の政治刷新本部トップを務める首相に「もう本部長を辞めた方がいい。あなたが政治改革の障害になっている」と面罵。「政権交代こそが最大の政治改革だと確信した」と言い放った。
◇安倍派は抵抗
26日の幹事会では、衆院政倫審の28、29両日実施が決まると見られていたが、自民が非公開を譲らないため結論が出なかった。出席する意向の安倍派幹部は「原則非公開と聞いている」と語り、公開への抵抗感を示した。首相周辺は「テレビ中継されれば(番組で)いいように使われて悪役に仕立て上げられると思っているのだろう」と指摘した。
事態打開に乗り出さない首相に対しては、与党内でも不満が漏れている。自民国対筋は「まとまらない」と嘆き、石破茂元幹事長は記者団に「個人的には公開すべきだ」と発言。公明幹部は「何をずるずるやっているのか」といら立ちをあらわにした。
◇政権行き詰まり
首相が今国会中の成立を表明した政治資金規正法改正の動きも足踏みが続く。自民内では2月中旬に検討チーム会合を開いて以降、表立った議論は行われていない。当初はパーティー券購入者の開示基準引き下げも浮上したが、チーム内からは「検討課題にならないだろう」と後ろ向きな声が出始めている。
報道各社の世論調査では岸田内閣の支持率が発足以来の最低を更新する結果が相次ぎ、政権の求心力は衰えるばかり。ある中央省庁幹部は「政倫審開催もめどが付けられず、政策議論は到底深まらない。政権の行き詰まりは明らかだ」と認めた。
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