◆「北多摩」はどこにある?
東京都の多摩地域北部に位置する東村山、清瀬、東久留米、西東京、小平5市は、西武新宿線と池袋線の沿線自治体としてゆるやかにまとまっているが、住民の地元意識は必ずしも高くない。とかく影の薄い5市の魅力を内外に知ってもらおうと、地元在住の記者経験者らが書籍「北多摩戦後クロニクル 『東京郊外』の軌跡を探る」(言視舎)を刊行した。「自分たちの地元は意外に面白いと思ってもらえればうれしい」と話している。 (佐藤圭)
◆「ひばりタイムス」で1年間連載、51のテーマ
執筆者は、元共同通信記者の飯岡志郎さん(72)=東村山市=と片岡義博さん(62)=小平市、編集者の杉山尚次さん(65)=東久留米市=ら6人。クロニクル(年代記)形式で取り上げた51項目のテーマは、戦時中の米軍空襲から自治体の合併と消滅、交通・下水道網の整備、遺跡の発見、事件事故など多岐にわたる。西東京市の地域報道サイト「ひばりタイムス」で2023年1月から1年間、週1回連載された年間企画を今回、読者や取材先の要望などを受けて書籍化した。
でき上がったばかりの本を手に取る(左から)片岡義博さん、飯岡志郎さん、杉山尚次さん=東京都千代田区で
飯岡さんと片岡さんは通信社時代の15年、全14巻の報道写真集「ザ・クロニクル 戦後日本の70年」を手がけた。2人は雑談の中で「クロニクルの北多摩版をやれないか」と思い立ち、何度も寄稿していたひばりタイムスに持ちかけた。
5市は戦後、都心のベッドタウンとして急速に発展した。西東京市が旧田無、保谷両市に分かれていた時期は「多摩6都」とも呼ばれていた。政治的にも経済的にも目立った中心部が見当たらず、一見、特徴のない地域に見えるが、「小金井カントリー俱楽部を占領軍が接収」「皇太子夫妻がひばりが丘団地を視察」「東村山音頭の志村けんさんが新型コロナウイルスで死去」などの連載のラインアップからは時代状況が色濃く浮かび上がる。
◆今、「人生のベテランが地域に貢献するチャンス」
5市も郊外都市のご多分に漏れず、人口減少と高齢化の波が押し寄せている。飯岡さんは「人口の増加に伴ってインフラの整備が進んだが、それが老朽化しており、維持・縮小するにはどうするかが課題になっている」と指摘。その上で「高齢者が増えるということは、経験豊富な人生のベテランが地域に貢献するチャンスでもある。10年、20年と幸せな北多摩像が描かれると願いたい」と期待する。
A5判、260ページ。2200円(税別)。問い合わせは言視舎=電03(3234)5997=へ。
ひばりタイムス 元共同通信記者の北嶋孝さん(79)が2015年2月に創刊した地域報道サイト。東京都西東京市を拠点に、近隣の小平市や東久留米市、練馬区の行政や議会、イベントなどをカバーし、これまでに掲載した記事は約3000本。地元在住の記者経験者のほか、市民ライター講座の受講生を含む約120人の市民が寄稿した。昨年末に新規の記事配信は停止したが、過去の記事は当面閲覧可能。サイトのアドレスはhttps://www.skylarktimes.com/
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