人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?
人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか? についての明らかにした書だ。
※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
多摩地区は高齢化のスピードが速い
2045年の東京郊外を覗いてみると、多摩地区で2015年の人口水準を下回らずにいるのは、三鷹、調布、小金井、稲城、狛江の5市だけになる。都心とアクセスのよい住宅街が広がるエリアは、この時期でも減り幅は小さい。
ただ、下回らないといっても、2035年までに多摩地区のすべての自治体が人口のピークを迎える。この時点では人口増加が続いているわけではなく、三鷹市(3.7%増)など2015年の人口水準をかろうじて上回っている市が残っていると理解したほうがよい。
一方、多摩地区の中でも都心までのアクセスが悪いところは激減する。66.8%減の奥多摩町や62.4%減となる檜原村は“別格”としても、福生市39.7%減、羽村市26.4%減、青梅市も21.9%減など、かなり減少率が高い。多摩ニュータウンが広がる多摩市は16.6%減、数多くの大学が立地し学園都市を名乗ってきた八王子市も16.1%減となる。
こうした“通勤限界圏”に広い住宅を求めた団塊世代も95歳以上となり、さすがに亡くなった人が増えるだろう。
これに拍車をかけるのが、彼らの子供たち世代の動きだ。先にも触れたように、長い通勤時間は家事や子育てと仕事の両立を困難にする。夫婦共働き世帯がより増えていく時代の変化にあって、彼らの子供たちは実家から飛び出し、「職住近接」を求めて都心部で自分の家庭を築きはじめた。こうした流れは孫世代にも続くだろう。
一方で、2045年には多摩地区に住み続けた団塊ジュニア世代も高齢者となる。結果として、多摩地区の多くの自治体は高齢化が急速に進む。人口減少もさることながら、多摩地区の特徴は高齢化スピードの速さにある。
高齢化率は檜原村64.9%、奥多摩町62.0%をはじめ、福生市(47.5%)、青梅市(44.5%)、多摩市(40.7%)では4割を超え、多摩地区1位の人口を誇る八王子市と2位の町田市も38.6%に上昇するなど、30%台後半というところも少なくない。 80歳以上で見ても、稲城市が2.37倍、多摩市2.12倍、町田市と三鷹市が1.95倍、八王子市1.92倍など、多摩地区では2倍前後の水準となるところが少なくない。23区においても練馬区は2.22倍と稲城市に次ぐ伸びだ。
東京のベッドタウンも同じように
こうした事情は多摩地区だけではない。サラリーマンたちが住宅を求めて移り住んだ神奈川県、埼玉県、千葉県内の通勤可能エリアの自治体の、2045年の姿からも同じような変化が見て取れる。
都心に通いやすい埼玉県戸田市(15.8%増)、千葉県流山市(14.7%増)、埼玉県吉川市(13.6%増)では2015年比で1割を超す人口増加となる。だが一方で、57.3%減となる千葉県鋸南町や56.1%減の埼玉県東秩父村など、9市町村では2015年の半分以下の水準となる。東京圏にあっても地方などからの流入が少なくなり、自然減を穴埋めできない市町村は人口が減っていくのだ。
一方、高齢化についても多摩地区と同じ流れをたどる。80歳以上だけを取り上げても、2015年に比べて埼玉県伊奈町は2.72倍、千葉県白井市2.67倍、千葉県印西市2.62倍、千葉県浦安市2.61倍、埼玉県戸田市2.60倍となる。
これを実数で見ると、政令指定都市を除く都市だけでも、千葉県船橋市6万6704人、埼玉県川口市6万163人、千葉県松戸市5万9520人、千葉県市川市5万9331人、神奈川県藤沢市5万4076人など、東京圏のベッドタウンで「高齢化した高齢者」が激増するところが目立つようになる。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)
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47都道府県はもはや維持できない。20年後の日本人はどこに暮らしているのか? 累計75万部超の『未来の年表』シリーズ著者最新作!映画に登場するゴジラが大都市を次々と破壊していくように、人口減少は、10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?今回は、これまで誰も本格的に試みることのなかった2つのアプローチに挑んだ。1つは、現在を生きる人々が国土をどう動いているのかを追うこと。もう1つは、「未来の日本人」が日本列島のどこに暮らしているのかを明らかにすることだ。2045年までに全自治体の人口がどう変動するかをまとめた、最新版の「日本の地域別将来推計人口」が公表されて以降、その詳細を深堀りした一般書はなかった。本書はその先陣を切るものである。